ここ最近の多くの作家が難儀しているストーリーテリング。それに対する最も適切な回答がまさしく今作だ。好みは分かれるであろうが、前作の「グッド・タイム」に負けず劣らずの堂々たる作品。
筆者がかの「ジョーカー」に対して感じた違和感。それは過剰な被害者意識。加害の視点の欠如。
それを意識しているかどうかはさておき、今作にはその両方の視点がある。それだけでも今作の意義は充分に堪能できるが、肝はそこではない。
撮影と編集。特筆すべきは、始まってはいるのにそうとは感じさせない。そして、嗚呼! こう終わるのか! と鑑賞後しばらく謎の笑いが止まらない、起承転結の概念を覆す、流れるような一筆書きのような編集。それは不自然なほど自然で、その証拠にあんなに小気味悪いはずのラストが、なぜあそこまで爽快なのか?
願わくば、本作を音響設備の整ったスクリーンで観たい。なにせ音楽は前作に引き続きOPNなのだから。beatsのイヤホンでもその素晴らしさはわかるのだから、それだけは言っておきたい。