つかれぐま

アンカット・ダイヤモンドのつかれぐまのレビュー・感想・評価

アンカット・ダイヤモンド(2019年製作の映画)
4.0
= NETFLIX =

本作が放つのは、映画的快楽とは真逆のストレス。だがこのブツは純度100%、混じりけのない本物の毒気だ。

1ミリも共感できない金の亡者のキャンブル狂が、ひたすら忙しく走り、叫び、殴られる2時間超。そんなクズ男から、なぜか目が離せなくなるという、映画のマジックが体感できる。そんなの要らん!という人(きっとその方が多い)にはお勧めできない。

冒頭から説明なし、会話の洪水(複数の会話が被りどう考えても煩い、しかもみんな言いたいこと言って人の話を聞いてない)に飲み込まれるカオス。この段階で好みがはっきりと別れる作品だが、とにかく「普通の映画じゃない」ことは間違いない。そんなカオスがやたら忙しく(時にゆっくりと)転がっていく様を傍観するのは、決して「面白い」とは言えないが、癖になりそうな「変な感じ」が残った。

自分では絶対に経験できないような「他人の人生」にライドする。映画の魅力の一つをそう定義すれば、本作はかなりの傑作。私を含めた多くの善男善女はおそらく生涯無縁であろう「壮絶なリスク」を主人公は取る。いや、取り続ける。そこに笑いながら呆れ果てるのが、本作の楽しみ方で、そんなクソ野郎に「憎めなさ」をトッピングするアダムサンドラーの演技が素晴らしい。NBA好きなので(今まさにNBAのドキュメンタリーThe Last Danceを毎夜鑑賞中)最後の展開にも燃えたよ。 

プロデューサーの1人が、スコセッシだ。確かに「グッドフェローズ」のような疾走感はある。ただ「グッド・・」に少し感じた「クズの美化(スコセッシにその意図はないのかもしれないが)」が本作には微塵もなく、徹底的にクズはクズとして描き切る姿勢(私はこっちが好き)に、巨匠のフォロワーに甘んじない作り手の矜持を感じた。

台詞が被りまくるから、吹替のほうがお勧めかな。

蛇足:
エキセントリックな愛人を演じた Julia Fox が色んな意味で気になって、検索してみたら、まあ凄い画像が出るわ出るわ・・男性諸氏はお試しを。