ニール・ブロムカンプ監督と、彼が立ち上げた「OATS STUDIO」の製作による、実験的SF短篇集の1篇。
起承転結というよりは、核になるSF的着想や世界観設定の部分の具現化に焦点を絞ったスケッチのようなスタイルだが、どの短篇にも監督の独創性の高さと着想の原典を見ることができる。
この作品は、極寒地域にある閉鎖的環境の炭鉱を舞台として、生物を殺害・融合し巨大化する怪物の脅威から逃げる2名の人物を描く物語。
その設定にはジョン・カーペンター監督による名作SFホラー「遊星からの物体X (The Thing)」に対するリスペクトが全篇から感じられながら、緊迫感溢れる演出の部分ではジェームズ・キャメロンの「ターミネーター」シリーズへのオマージュに感じられるところもある。
なおかつニール・ブロムカンプ監督ならではのSFガジェットの質量感と、破壊者の容赦ない暴力性もあって、とても濃度が高い短篇になっている。
主人公を演じるのは、子役時代からハリウッドで活躍しながらすっかり大人になったダコタ・ファニングで、そのキャスティングのセンスがとてもいい。
ダコタ・ファニングが放つ無垢な存在としての美しさが際立つ前半と、ある真実が明らかになってからの後半の演技の変化がとても面白く、一流の俳優が持ちうる演技の説得力はすごいものだなと再確認した。
約20分の短篇では少し物足りず、2時間の長篇で観てみたいとも感じたが、もしかしたら1時間程度の中篇ぐらいが丁度いいのかも知れない。
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