渾身の一作。監督の分身、夏帆が道化のシム・ウンギョンと田舎に帰り、いろいろ感じるという物語が、独特のテンポで進む。
よく、回想を撮れば一本は傑作ができるという。職業も同じだし、田舎も実際に監督の茨城だが、これはそれとも違う。
監督のいうとおり、「セミドキュメンタリー」のフィクションであり、現在の自分が反映されている。
あれほど嫌っていた実家へ帰ってみると、いろんなことが思い出され、ものごとに対する感じ方が揺さぶられていく。
『天然コケッコー』では、あどけなかった夏帆が、バリバリで立ち止まったら死ぬくらいの業界人・女性ディレクターになりきる。
デビュー当時を知っているから、よけいにリアルに年齢を重ねている。
あたりまえだが、毒舌全開でバリバリの女性も、繊細で感じやすい部分はある。それは、みんな知っている。
シム・ウンギョン、『事件記者』ではあれだけシリアスだったのに、ここでは明るさ全開。楽しそうでいたずら好きそうな目が巧い。
直前に見た『楽園』は田舎の閉塞感を描いていたが、イバラキはバイタリティーがあり、主人公はなんせ「ブルーアワーにぶっ飛ばす」。
なんだか元気がでる、新鮮な作品だった。