とらキチ

国家が破産する日のとらキチのレビュー・感想・評価

国家が破産する日(2018年製作の映画)
3.9
1997年に韓国を襲ったIMF経済危機を異なる立場、それぞれの視点から描いた作品。
中央銀行の担当部局に身を置き、通貨危機から国民を守ろうとする女、通貨危機を逆に利用して儲けようとする男、通貨危機の荒波に翻弄され、それまでの家庭生活を壊されてしまう男。何故韓国がこのような状況に追い込まれ、どのように対応していったのか、この3人の視点で描かれる。
この3人の視点の切り替えがテンポ良く巧みで、ストーリー展開の状況が把握しやすい。特に通貨危機をチャンスと見た金融コンサルタントによる“与信”をキーワードにした、この事態に至るまでの説明、問題提起のプレゼンが明確でとてもわかりやすく、合間に庶民の切ない苦悩も描かれているので見飽きない。特に作中、自己保身が第一の事勿れ主義、売国奴な政府高官、官僚達には絶望させられる。彼らのその場凌ぎの間違った選択で泣かされるのはいつも庶民だ。
IMFの専務理事をヴァンサン・カッセルが演じていたのにはビックリ。韓国作品だと大体こんな役は、知らない役者さんが演じているパターンが多いので。
この3人、決して直接的に交わる事は無いのかと思っていたが、最後、あの2人のアノ展開には驚かされた。そこはフィクションとして実に上手い設定、演出。
毎度毎度のことだけど、謂わば自国の歴史上の恥部である筈の史実をこうしてエンタメに仕上げて警鐘を鳴らしてしまう韓国映画界は流石だ。しかし逆に言えば、このような事実をちゃんと記録して残し、のちにちゃんと公開しているからこそ製作出来るのであって、平気で公文書を改竄、隠蔽、破棄してしまうような我が国でこんな作品を作る事が出来るのか、甚だ疑問だ。
1番良かったセリフ
「危機は必ず繰り返す。危機を回避するためには、絶えず疑い考えることだ。それには、当然だと決めつけないこと…常に目を見開いて世の中を見ることが大事だ。私は二度も負けたくないのだ!」
今、周りを振り返って、どうだろうか。
とらキチ

とらキチ