いち麦

国家が破産する日のいち麦のレビュー・感想・評価

国家が破産する日(2018年製作の映画)
5.0
韓国での実話ベース。国家の経済危機から社会格差を拡大する仕組みが生まれるまで…歯に絹着せぬ物言いの社会派ドラマ。様々な立場の人間を群像劇の様に組み合わせる見事な演出。特に金融コンサルタント=ユンの金儲けで喜ぶ姿に見え隠れする悲哀感が素晴らしい。

ユンのやり口は、国家的経済破綻を予測しながら株の大暴落時に空売りで大儲けする者どもを描いた『マネー・ショート華麗なる大逆転』を彷彿させるが、こちらの映画では、国家の破産を健全に防ごうと必死に奔走する韓国銀行通貨政策チーム長ハンを正義のヒロインに据えているから救いがある。

ごく普通の人間が地道に働くのを蔑み、寧ろ資本家が一層自分の資産を肥やしていくことに加勢する社会へと転換していく舞台裏事情(の一端)を垣間見せてくれた。
そもそも「信用」を取引することの多大な危険性。真実を隠蔽する体質。相手が見えなければ他人を不幸のドン底に陥れること承知で資産肥やしすることだけしか頭に浮かばない輩の存在など。…考えさせられる事が多い。やっぱり韓国映画は正直で気持ちいいワ。
IMF側の交渉人役にフランスの名優V.カッセルを配しているのも侮れない。
いち麦

いち麦