トロかじき

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのトロかじきのレビュー・感想・評価

4.5
彼らは生きていた/They shall not grow old

あのピータージャクソン監督が第一次世界大戦の英軍の映像をカラー化し映画を作った…と聞いていたが、いやぁ凄い映画やった。

ドイツとの戦争になり、19歳から志願出来る所に15〜17歳の少年達が嘘をついて志願する、戦う事が正義と信じていたと当時のモノクロ写真と帰還兵のインタビュー音声が流れる。

いつの時代も、勿論明治〜昭和の我が国の状況も同じやったんやな、戦争の惨劇を、恐怖を知らない若者は愛国心や正義の名の下に志願してたんやなぁ。

当時のモノクロ写真が流れ、志願、訓練と話は進んでいく。30分程モノクロ写真にインタビュー音声が続き、あれ?動画は無いのか?と思った所に動画が流れ、モノクロの世界からカラー映像に。前線の塹壕に配置された彼らが動き出す。

残されているモノクロ動画フィルムに色を付けているので、ちょいちょい不自然な所もあるがこれは凄い。塹壕掘りの過酷な生活の動画、写真、インタビュー音声、付け足された環境音。引き込まれる。

最初は笑顔が多い彼らも更に前線に繰り出される頃には笑顔も消え、疲労と恐怖の表情に。

第二次世界大戦以降にも当たり前に使われていた「敵機関銃に向けての一斉突撃」の命令が下る。
砲撃が終わるまで待機している彼らの地獄、そして突撃へ。

英軍、独軍兵士の死体が次々に映し出され、爆発音や地獄を知る者の凄まじい内容のインタビュー音声。

突撃の場面は、動画は流石に残っていないので、迫撃砲の発射シーンやイラスト、死体のカラー写真などになるが、600人中100人も生き残れなかったと語られる突撃行動の酷さは嫌と言う程伝わってくる。

戦争が終わり、生き残った者は帰還へ。ここでまた映像はモノクロへ戻った。

生き残った彼らが語る事によって、残された映像に手を加える事によって、戦争の悲惨さが戦争を知らない我々にいつまでも伝わる事に感謝ですね。

映画「1917」を観た方にも是非観て欲しい傑作だと思う。

戦争はしてはいけない。しかし殺されるくらいなら占領されて奴隷になるくらいなら戦って死ぬ方を選ぶ…でもそんな選択をせざるを得ない状況を、今後の人間は避ける事が出来ると信じたい。