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彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのピットのレビュー・感想・評価

4.0
戦争についてまたまた考えさせられた。

始まりは兵士として戦争に参加する気持ちそれを美化する社会の雰囲気。国を守ろうとする思いに駆られる若者たち。
戦争の悲惨さ。死に対する恐怖心。周りの人間が死んでいく事に対する死に対する麻痺。敵と分かり合える気持ち。ただただ生きているということに対しての価値観。戦争が終わって社会が彼らのことなど受け入れていない、誰も無関心、話すらもしてこない・・・虚無感、空虚感。

沖縄のひめゆりの塔に行ったことがある。
語りべのおばあちゃんが実際に戦場で思い出したくもない経験を語ってくれた。内臓が腐り始め口からウジがわいてきている来ている兵隊さんに水すら満足に与えられなかった。友達が横で撃たれ倒れたのに助けるどころじゃない逃げるので精いっぱい、助けるという気持ちはその場になると考えすらも浮かばない。
涙を流しながらて語ってくれました。
そして最後に言ました。
「戦争。殺し合い。何の意味も持たない。悲惨な思いをするだけ。皆さんは分からないかもしれませんが絶対に繰り返してはいけない。あんな悲惨なこと。無意味なこと」
いまでも忘れられない。
劇中で同じことが語られていた。
なぜ、忘れてしまうのか人間は・・・
所詮動物、本能だから?
理性があるから、学んで賢くなるから、人は人ではないのか?

似たような作品はあるにはあったが、とくに最後の虚無感、空虚感。いったい何のために命を差し出そうとしていたのか?当事者の実際の言葉として、ここに触れている作品は私の中では記憶がない。
ベトナム戦争の帰還兵を描いた「ランボー」もそうだったが、そういうことか、戦争に行って身を捧げる思いをしたのに国に戻れば仕事ない感謝も尊敬もない。全ての戦争、国がそうだとは思わないが・・・
そんなもんなんだ・・・
とても勉強になりました。

この作品を見ている途中に「ザ・パシフィック」を思い浮かべた。
アメリカのTVドラマ「ザ・パシフィック」。同じ構成だが、映像を見る限りこの作品「彼らは 生きていた」の後に作られたイメージを持ったが8年も前に作られていた。
生き残ったおじいちゃんたちのインタビューなり感想なりを交えて映像を見せてゆく(こちらは作り物)。ザ・パシフィックの映像はプライベートライアンさながらのCGを駆使したもの。トムハンクスが総指揮をしているなど見どころ満載。CGが凄すぎてエグイのなんの・・・(笑)
この作品「彼らは生きていた」は実際の映像をデジタルリマスターしている。最初の出だしは白黒画像、画質も動きも最悪なんだが、途中から画像処理をしたものに突然変わる。ちょっと驚いた。観おわってから考えると上手い演出。戦場に行く前とこれから本当の意味で戦慄を体験する時間に変わるときに画質が変わる。上手い!(笑)
それでも今日の高画質映像と比べれば比較するれば酷いものなんだがその時は初めて見分けのつかないCGを見たくらいのちょっとした衝撃はあった。

エンドロールに流れてくる曲・・・
大脱走の大脱走マーチ、戦場にかける橋のクワイ川マーチ、みたいに明るくて清々しく軽快な曲だが・・・
実際の悲惨さを見せられた後に聴くとその軽快な歌声がなんとも・・・
余計に悲しく感慨深くなってしまった。
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