ハレルヤ

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのハレルヤのレビュー・感想・評価

4.0
第一次世界大戦から100年以上が経過した現在。膨大な数の当時の映像を厳選し、可能な限り修復してカラー化。実際に戦争に参加した元兵士たちのインタビュー音源を元にして、戦場での様子を表したドキュメンタリー映画。

監督は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ、「ホビット」シリーズの名匠ピーター・ジャクソン。彼の祖父も第一次世界大戦に従軍していた事もあり、監督と製作を担当した本作。史実を映し出した内容でありながら、彼の他の作品と同様に映画としての見せ方も冴え渡っていたと感じました。

最初は第一次世界大戦の概要から始まり、イギリスでの若者たちが軍に入るくだりに続きます。そこまではモノクロ。そして戦場に入ってからカラー映像に切り替わり、その見せ方のメリハリが巧い。

戦場の映像は100年前とは思えないくらい鮮明に修復されていて、生々しさが伝わってきます。インタビューも合わせるとその時の兵士たちの気持ちも乗り移ってくるかのよう。その辺りに転がる死体も本物。損傷が激しく腐乱して虫やネズミが沸く描写もしっかりと捉えられていてまさしく地獄絵図。

自分の隣にいる仲間がいきなり命を落とす瞬間を目撃したり、自らも腕を撃たれたけれど最初は衝撃が走っただけでよく分からなかった。そんな当事者たちの話は、戦争映画の描写よりもリアルさが感じられました。

塹壕の映像を見ていると、最近の映画「1917 命をかけた伝令」はかなり精巧に再現していたんだなと改めて思うほど。

大戦が終わり、帰還兵たちを故郷で待ち受けていたのは露骨な差別。社会への復帰に不安を感じる人、平和な生活に違和感を覚える人、こういった描写も戦争は戦場だけじゃないと感じます。

この戦争が終わっても20年後には第二次世界大戦が起こるという現実。繰り返される悲劇。戦争の無い今の世の中の有り難さを痛感させてくれる作品でした。
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