賽の河原

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドの賽の河原のレビュー・感想・評価

4.1

そろそろ映画の感想あげてると非国民と罵られそうですね。とはいえ、もう観ちまったもんは仕方ないですしね。大手のシネコンなんかはまだいいですけど、ここから当面の間自粛を迫られるとなるとね。COVID-19でなくたって死人が出そうな勢いですね。
ということで『彼らは生きていた』を観てきました。もうこれは第一次大戦を描いた映画としては決定版かなっていうか。教材みが高い映画でね。
R15ついてしまってるのが大変残念なんですけれども。
第一次世界大戦、言うまでもなく人類が初めて直面した近代戦ということでね。勿論記録映像なんかも残っている戦争なわけですけど、本作はイギリスの帝国戦争博物館にあるアーカイブを使ったドキュメンタリーなんですけど、最新技術でカラーつけてリマスターしているという。
カラーがつくだけでもこれだけ違うのかって驚きはありますよね。人間の認知とか認識ってクソ適当っていうかね。モノクロの映像だと「資料映像」感があるわけだけど、カラーになるだけでより近い、差し迫った映像になる。
じゃあリアルなのかって言われるとぶっちゃけ『1917』の方が「リアル」ではあるんですよ。もはやフィクションと現実って一体何なのかわかんないですね。
序盤はモノクロで、全編戦争に参加した兵士たちのナレーションで進んでいくんですけどね。若者たちが「戦争」というものをどのように捉え、国家がその若者たちをどのように動員していったのか。
そして戦場で繰り広げられる地獄絵図ですよね。相手の攻撃による負傷や死のエグさもさることながら、塹壕での軍事行動のキツさがね。もうトイレとかの衛生面もエグいですし、雨とか降って塹壕に水が流れこんで起こる「塹壕足」。
一方でこの映画がズバ抜けて素晴らしいのは、そういう戦闘の厳しさだけじゃなくて、言わばオフショット、戦争時の兵士たちの日常が描かれているのが素晴らしくてね。
カビだらけのビスケットで紅茶を飲む、平時から見たら悲惨としか言いようのない状況ですら、兵士たちの食事シーンには我々の日常の延長線上にある姿が映し出されるわけですよ。
この映画、原題が"They Shall Not Grow Old "という見事としか言えないタイトルですけど、まさに映像に刻み込まれた若者たちの日常が、第一世界大戦という歴史的な事件を浮き彫りにしていますよね。
また、ドイツ兵捕虜とイギリス兵の絡みも興味深いというか。結局のところこの戦争って何のためにしているのかっていう。
終盤、恐ろしく残酷なのは彼ら若者たちが国のために悲惨な戦争に参加したにも関わらず...。というシーンですよね。
今般の自粛要請も中小事業者には大いに打撃だと思いますが、ことが終わってしまえば同じような振る舞いをしそうですね。
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