ベルサイユ製麺

バイバストのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

バイバスト(2018年製作の映画)
3.9
こういうジャケ写の前を素通りする様では男の子が廃りますよ。完食してから「今の据え膳ですよね?」って聴くくらい前のめりでいきましょう!!そう、ギャバンの主題歌聴きながら!
そして…監督エリック・マッティ!
…と言えば、秀作ノワール『牢獄処刑人』でもって、私に“洗練された”フィリピン映画というものの存在を強烈に印象づけた訳ですが、フィリピンフィリピンてずっーと考えていられないので、すっかり忘れておりましたな。


警察特殊部隊と麻薬組織のスラム街での死闘は、スラマーの皆様も巻き込み、熾烈・壮絶・雑を極めた!


冒頭、デラクルスという麻薬捜査官が売人テバンをド詰めしておりまして、麻薬売買の大物ビギー・チャンの居場所を(拳などを駆使して)尋問しております。
そしてデラクルスはこの売人テバンを餌にしてアジトまで着いていき、一気に殲滅という作戦を考えましたよ。…ソレ危なくない⁉︎
作戦行動に当たるのは訓練を積み武装した特殊部隊。主人公の女性隊員のニーナはこのチームに加入したばかり。…というのも、彼女が所属していたチームは彼女を残して全滅してしまったから。そのため彼女は「縁起悪い」「裏切ったんじゃね?」と腫れ物扱い、彼女もそれに反発してチームの足並みは揃いません。隊長はなんとかチームをまとめたい…。
さて、アジトの急襲作戦ですが、テバンは組織の一味にドンドンドンドンスラム街の奥の方に連れて行かれます。…このスラムがもうめっちゃスラム!細く入り組み、激しい高低差、ジットジト(というかビッシャビシャ)で張り紙や落書きだらけ。現地のダンスミュージックがプープーププープーンプーン♬とけたたましく鳴り響く!雰囲気はさながら昔の歌舞伎町の路地裏でございます。森山大道が写真撮ってるかも!
で、この作戦が実は組織にバレていて、全く土地勘の無いスラムで戦闘がおっ始まる訳です。コレがだいたい40分目くらいの出来事。
…この映画、恐らく意図して捻りの無い構成・淡々とした進行にしていまして、例えばオトリ作戦の描写にしても〈なかなか組織が現れない〉→〈結局来ない〉→〈電話が有り、場所を変更〉→〈スラムにぞろぞろ部隊が移動〉…みたいな、別に無くても良いシーンをじっくり描くんですよね。”コレ、このままマッタリと最期までいくんか⁇派手派手なジャケ写はサギ?”と不安になりかけた位のタイミングで!…いきなり交戦状態!!!しかも、驚いたことにどんどんエクストリーム度を上げながらノンストップでザックリと最後までいきますよ!!
敵は銃で武装した麻薬組織と、日用品などを振り回すスラマーの皆さん。言わばスラム全体が殺戮装置となって部隊に襲いかかります。如何に選りすぐりの猛者たちと言えど多勢に無勢、ジリジリと数を減らしいていきますね。なんせ、スラマー達が蟻の様に高所からポロポロおりてくるし、チビッコも切りかかって来る!特殊部隊、律儀にオモプラッタ極めてる場合じゃないよ!!
結果、生き残ったのは主人公のニーナと、巨漢の隊員ヤッコ。ニーナは撃って良し、刺して良しのオールラウンダーです。非常に良く動く方なんですが、なんでも元モデルから女優に転身したのだそうですよ。ガッツの塊!
巨漢のヤッコ、どんな目に遭ってもまあ死なない!ぶっとい腕でブン殴り、投げ飛ばす!ハイキックも決めちゃう!サマになってる…と思ったら、元UFC、現ONE FCヘビー級王者ブランドンヴェラじゃないですか!そりゃあ、説得力あるわ…!この2人が凄く絵になるの!デュナンとブリアレオス的な…。
で、二人対スラム全体という絶対絶命の局面で、なんとスラマー達が麻薬組織にも襲いかかっての三つ巴、言わば“見苦しいスマブラ”みたいな地獄絵図メガバトルがメインイベントに待っているわけですよ!!!はぁー、やり過ぎかー…。

ベストシーンは、後半のニーナの長回しのバトル&スタント。カメラワークもなかなかですし、バトルのコレオグラフィが相当凄い!
ただ、全体的にバトルはシンプルな殴る蹴る刺す主体で、『ザ・レイド』みたいなテクニカルなモノを期待してると肩透かしだと思いますが、とにかくその体当たりぶり、熱量はホントすごい!あと、独特の劇伴のセンス!どんな気持ちにさせたいの⁈(エンディングのシャブの唄の脱力感凄いよ!)
編集がちょっとチャカチャカ気味なのと、…やっぱり不必要に長いのはちょっと減点ですかね。組織を仕切るチョンギがちょっとDJクラッシュに似てるのは、…やっぱりこういう修羅場に居る顔なんだなぁと変に納得しましたね。あと、ラスボス、ビギー・チャンのルックスよ…!あれ大丈夫なの?アレってアレだよなぁ…。
あ、終盤のメッセージの部分は、…聴き流しても問題無いです。

まあ凄いインパクトなのは間違い無くて、当然好き嫌いが別れると思いますが…、ビーバップ的な、ドロドロでずっと殴り合ってる男の子世界がだーい好きって方には大推薦です!!(特効がめんどくさいのか)意外とグロシーン殆ど無し、微グローって感じで安心ですし。やっぱりフィリピン映画はおもしろい!…この監督が特別なだけかな?