柊

Fukushima 50の柊のレビュー・感想・評価

Fukushima 50(2019年製作の映画)
3.8
まず確実なのは、どこで間違ったのか?と言う絶望的な問い。原子力発電と言う開発途中なエネルギーの最終処理の方法さえ不明なのに、安全神話をでっち上げ見切り発車した。その事が間違いなのだと思う。つまり最初から間違っていた。
海辺に集中する原子力発電所、地震国日本の起こるべくして起こった人災だと思う。

過疎の村を札束で平伏させて、作った原子力発電所。出稼ぎから発電所勤務と言う夢の待遇と原発マネーで成り立つ立地自治体。一基作ればアリ地獄のように容赦ない複数建設。40年と言う歳月をかけた砂上の楼閣が、ついに足元から崩れ去った。取り返しのつかない残酷さで。

40年もの間住民と共にあった原発は、すっかりなじんでしまって、まさに生活の一部となってしまっていた住民達。働く人達も40年と言う歳月はそれぞれを歯車としての自覚さえも育ててしまった。故に何か起これば我が子のように原発を何とかしようとしてしまう。本社と現地の温度差はこれでもかって言うくらいに映し出される。そして政府の無能…事ここに及んで誰よりも邪魔になっていた総理大臣。
この辺りを描き切った熱意は買いたい。
吉田所長以下、福島の現地の関係者あってこそ東日本が滅亡しなかった事にも感謝しかない。

その偉業を称えるだけの作品にしてはいけない。あれ以来全国で反原発の動きがあるにも関わらず、この国も東電も何も変わっていない。全国各地に原発はあるのに、福島だけの問題になってしまっている。

現地を訪れた人なら誰でも気がつくであろう、復興と言う言葉のまやかし。オリンピックよりも復興をと言うのが福島の声なんじゃないかな。原発はコントロールされているとオリンピック誘致の時にほざいた安倍首相にバカ言ってんじゃないよと苦言を呈する人が皆無な恐ろしい政府。

原作の門田隆将さんのもう一つの本。あの時の福島民友の記者達の記録。それを読んでいたからダンカンの福島民友と名乗っての質問にはグッときた。東京詰めの記者だからあんなになまってはいないと思うけどね。3月12日の福島民友が発行されて当日配達されたと言う事実にも感動。あの日あの時、誰もが自分の持ち場で誠意を尽くしてたのだと思う。

ただアメリカの支援だけがクローズアップされていたのは何の忖度?
あの時は、大きな支援も小さな支援も世界中から届いていたと思う。
そしてこの手の映画に出るメンバーがほぼ固定されているように思えるのも残念な感じ。
柊