マクガフィン

Fukushima 50のマクガフィンのレビュー・感想・評価

Fukushima 50(2019年製作の映画)
3.5
狙ったわけではないが3月11日に鑑賞し、感慨ひとしおに。
序盤からスマホの緊急警報のアラーム音、地震や津波の映像、任務の過酷さなど、現場で追体験するような手法で当時の記憶が蘇り、スクリーンを見るのが辛くなることも。原作未読。

人知を超える津波と余震のパニック的な恐怖に、放射能が漏れて汚染された原子炉内に入って、命懸けの作業するミッション要素に様々なタイムリミット要素が積み重なって、切なさ極まりない。現場の使命感は、職業意識の高さ・郷土愛・家族愛・仲間との絆など、個々の様々な背景に胸が痛くなる。過酷な任務を指名しないといけない、現場責任者の辛さも切ない。そんな現場の中でも、指示系統を統一したことに感心も。

最前列で牽引する作業と、佐藤浩市の作品を引っ張る演技のマッチさが良く、ダブル主演の渡辺謙も同様に。背景が過酷過ぎるので、演技や演出が大仰に感じないことも良い。現場・現場の中の最前線・東電・総理大臣の各々のポジションの指揮官の対比により、指揮官の重要性が炙り出される構成も興味深い。説明セリフ無しで、総理大臣と東電の上層部の無能さが炙り出される演出に感心で、まるでコントのような行動や発言の滑稽さが、テイストを中和したり、現場と東電本部と官邸の隔たりを表すことに効果的に。

終盤の現場から離れるとドラマ仕立てになるのが少し残念だが、それまでの現場・東電本部・首相官邸・現場以外の福島のシュチュエーションやパートの処理や扱いが良かったので、繋がりがあり、蛇足にならないことに。テイストの変化は必要なことも理解できるし、纏め方は悪くはない。

エンドロール中の原発事故の〈その後〉の津波や地震や被爆の背景や、発電機の多様な供給減の移行などで、色々考えさせられ、何とも言えない感情が込みあがる。