あゆぺん

ホテル・ムンバイのあゆぺんのレビュー・感想・評価

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
5.0
2008年に実際にムンバイで起きた同時多発テロを元に作られた映画。テロリストがパキスタンからムンバイに到着するシーンから始まる。その後は、赤ちゃんが泣き出したり、熱が出たり、これから悪いことが起きる予感が描写されている。臨場感があり、始終ヒヤヒヤした映画だった。


監督が考えさせたいテーマは宗教とお金についてだと思う。
~貧困、お金について~
実行犯サイドの視点の描写がある点が斬新。テロを起こしているのは少年である事に驚いた。無線電話で司令を受けたとおりに、「偉大なるアッラーの神よ」 と唱えながら多くの人を銃で撃っていく。貧しさは憎しみを生みやすい。冒頭のテロ前のシーンでは、「彼ら(異教徒)から奪われたものを思い出せ」 と司令塔から言われ、少年が気持ちを奮い立たせられていたのが印象的。貧しく育ち、親にお金を振り込まれると信じて実行犯となった少年たちであるが、本当にお金が振り込まれているかを気にして家族に電話をかけるシーンや、騙されたことを知って泣いて家族に別れを告げるシーンなどもあり、残虐なことをした彼らに同情は出来ないが、胸が傷んだ。

~宗教について~
テロリストが、容赦なく人を撃つことは出来るのに、女性の胸に手を入れるのは出来ませんと言っていたシーンが印象的。

人質を1人残らず殺せという司令に対して、コーランの一節を唱えている女性だけは殺せなかったシーンも忘れられない。無線で司令塔で繋がれているため、「殺すぞ」 と言いながら銃口を壁に方向にむけて撃っていた。

また、オペロイ料理長とロシア人ワシリーの「神の御加護を祈ります」「祈るな、それが全ての元凶だ」のやり取りも印象的だった。



逃げ道を知っているのにも関わらず宿泊客の為に残って守ったホテルマンの姿が立派だった。緊急時でも普段モットーてしていた「お客様は神様」を守り抜いたのが凄い。映画全体を通して描かれた、産まれた時から神と密接に関わってきた彼らの気持ちを私は理解できないだろうけど、だからこそ、見なくてはならない作品だと思った。心から見てよかった映画!
あゆぺん

あゆぺん