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ホテル・ムンバイのNMのレビュー・感想・評価

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
4.1
インドの最高級ホテル、「タージ・マハルホテル」にて起きるテロの話。
お客様は神様、そんな気持ちを誇りとして働くホテルマンの様子がひしひしと伝わる作品。

ただただ現実で逃げられない、この残酷さ。
もっとなにか出来ただろ。マヌケ。…なんて意見があるのかもしれないが、死ぬかもしれない自分の命を捨ててまで人を助けるために貴方は行動出来るのか胸に手を当て考えてみて欲しい。
そう言う奴ほど実際になれば自分のことしか考えられないのだ。

テロリストに対し、強くあるべきではあるけどそこまでホテルマンやシェフは強くない。
テロリストに対して攻撃する事で、助かったり全員で生還したりなんて現実では出来ようもない。
しかしこれが現実なのだと。理不尽さに怯える人間に太刀打ちできない自分の非力さをホテルマンは恨むのだろう。
けれどホテルマンやシェフは、強くはなくとも人を強くさせる力はあるのだ。それを守ろうとする力だけはそこにある。
だからこそ、自分が非力だとしても前に1歩出てお客様の命を守るために仕事を全うするのだ。
自分が信仰の様に付けていた布を外したのは、己の信仰の深さよりも目の前の死にそうな人間の方が尊く大切だと、そう思えたからだ。

シェフも本当に勇敢だった。
残酷な空間でもお客様を喜ばせようだとか、安心させようというおもてなし。
それは生還者の心の支えになり続けるのだろう。

それと、逃げたホテルマンを責めてあげないで欲しい。彼らだって家族がいて、恋人がいて死ねない訳があるから逃げるのだ。
彼らだって仕事がなければ、お客様なのだから。

この映画を見て、警察の大切さや、セキュリティの問題…そして宗教や貧困問題様々なことがテーマだった。それら問題は自分のすぐ近くにあってこれからの私達の生活を考えるひとつの作品なのだと思う。

こうなって欲しいという思いが打ち砕かれるのはノンフィンクションの残酷な所だが、ノンフィンクションだからこそ自分の胸に残るものがあるのだろうと思う。
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