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ホテル・ムンバイのqudanのレビュー・感想・評価

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
4.0
テロを文字通り「恐怖」として描いている。
前半から中盤にかけテロリスト側の目的を明かさず、ひたすらに理不尽な恐怖に満ちている。
ゴアシーンこそないが、人は一瞬で死ぬという恐怖とテロリストから懸命に隠れるサスペンスの演出は洗練されている。

実行犯の動機は語られるが最小限。テロの黒幕は謎のまま。
そのバランスがテロを描く映画としては良かった。
何も語られないのは理不尽すぎるし、テロリストに肩入れしてしまうほど描いてしまっては視点がズレてしまう。

一方で、主人公を含むホテルの従業員・宿泊客を描くときは非常に脚本がなめらか。
テロリスト側を理不尽に描いているため、こちらサイドは各人の行動の動機を明確にし、観ている側にテロ以外でのストレスを与えないよう気配りに満ちていた。(それこそ一流ホテルマンの如く)

そして死地を救う劇的なヒーローがいるわけではなく、各々自分が出来ることをまっとうしようとする姿に、プロとして人間としてのあり方に感動がある。

また作品のトーン自体は涙を誘う感動巨編というよりは、起きたことを淡々と描いている。
もっと泣ける劇的な演出を入れることもできたんだろうが、あえて少し引いた目線に監督の生き残った人たちへの敬意と、亡くなってしまった人たちへの弔慰を感じる。

ボストンマラソンで実際に起きたテロを題材にした「パトリオット・デイ」はよりヒロイックでアメリカンな演出なので、比較してみるといいかもしれない。