Kaz66

ホテル・ムンバイのKaz66のレビュー・感想・評価

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
4.1
ホントは劇場で観たかったのですが、逃してしまいようやくDVDにて鑑賞。
“インドの9.11”と言われる、2008年『ムンバイ同時多発テロ』でのタージマハル・ホテルを切り取った『事実に基づくストーリー』です。
プロットは『テロという非常時における、ホテル従業員の勇気ある行動』的な感動ストーリーですが、その背景には 宗教的対立/貧富格差/偏見と尊厳 などの重〜いテーマがドカッと横たわり、(事実に基づいてるので)それらに対する“救い”もありません。
この映画では、イスラム原理主義者=悪で、ヒンズー/キリスト教は被害者となってますが、イスラム教者全てがそうではないだろうし、パキスタン側から見た世界の見え方もあるのだろうと、色んな事を考えてさせられる作品でした。
特にラストシーン前の、ホテル客の人質(ザーラ)がテロ犯を前に命乞いをする際の“アッラーへの祈り”のシーンは様々な感情・思想が入り混じった名演でした。

こんな映画を、長編デビュー作にしてよく撮ったな!と感心するアンソニー・マラス監督はまだ(たぶん)30代の若い監督。「ボーダーライン」の製作陣が放つリアルな映像、徹底したリサーチにより“ヒリヒリする程の緊張感”を見事に映像化していました。
主演は「スラムドッグ$ミリオネア」「LION/ライオン」のデヴ・パテル、共演に「君の名前で僕を呼んで」のアーミー・ハマー、「スキャンダル」のナザニン・ボニアディ、料理長役、ロシア人社長役と素晴らしい演技でもありました。
それらが見事に一つの作品に結集した奇跡。
劇場で見逃したことを後悔する、傑作でした。
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