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ホテル・ムンバイのRockoのレビュー・感想・評価

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
4.3
素晴らしい出来栄え。
同じ題材であるテロ事件を映画化した『ウトヤ島、7月22日』は劇場で単独犯の銃声の恐ろしさに怯えたけれど、こちらの作品は自宅鑑賞でも複数犯の銃乱射に恐ろしさを十分過ぎるほどに感じた。多少フィクションで描かれているようですが、凄まじい緊張感とホテル従業員達の団結に心打たれました。

実行犯がハッキリと描かれているのが印象的で、未熟で幼稚な若いテロリストとはいかにも教養が無さそうで、テロ実行の指令に従っているのが金のためだと思われるシーンがある。
若者が過激派組織に加わる要因は実は宗教思想ではなく貧困からなるものが大きいという。仕事も学校も無く金も無い状態で組織に勧誘され、雇用と教養の無い作品内のようなテロリストが生まれて行く。その背景には政府や警察に対する不満があり、テロ対策には国際的に様々な意見が交わされている。

この映画はフィクションだったとしても犯人像の見せ方やホテルの密室という状況下で身を潜める被害者側の恐怖に打ち勝つ勇気が充分に伝わって来たのではないかと感じる。監督は今作が長編デビュー作と知り驚いた。

テロリストが犯行の映画化を自慢したければ勝手にしてればいいと思う。自分たちの犯行が映画になったと思っていたら大間違いで、何かのテーマを持って映画が製作され観客が観るというのは日常であり、テロリストが恐怖で私たちの日常を変えるのが望みならば事実とテロに屈しない勇気を持った人々の物語を映画化することは重要な意味を持ち大きな価値がある。

●2020年126作目
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