マクガフィン

影裏のマクガフィンのレビュー・感想・評価

影裏(2020年製作の映画)
3.0
序盤から暗いトーンで、空気感を狙い過ぎなきらいもあるし、導入部が長くてもたつくことも。情景豊かな釣りシーンあたりより興味が沸くのだが。原作未読。

束の間の夏の美しい光に照らされた川の流れの美しさや緑豊かな情景に、一人の男との出会いと別れを、一夏の輝かしい出来事のように纏める叙情的なテイストとした、光が当たる箇所。そして、突然と失う深い喪失による退廃的な跡などの影の面。濃い影の中に、生命力を感じる祭り。それらを、〈自然〉や〈人〉が発生とした光・雷・火・水などの情景を汲みこませ、大震災の〈喪失〉からの雑草魂のような小さなコケの僅かな〈再生〉とする、〈人〉の体験と〈自然〉の流れを照らし合わせるような奥深しさは理解できるし、やりたいことは伝わるが決して上手く描写できていないことに。

淡々と展開し、行間を喚起させると思いきや、言い回しの諄さや説明でバランスに問題も。文脈やリズムの悪さは拭えなく、様々な前ぶりが長く、情念も散漫気味に。実写化が難しい題材は理解できるし、純文学的な題材は好みで興味深いが額面通りに受け取ると面白味に欠ける。上映時間の134分は長く、監督のいつも通りの長尺なスタンスは如何なものか。