てつこてつ

小さな池 1950年・ノグンリ虐殺事件のてつこてつのレビュー・感想・評価

3.0
誰か一人を主人公に立てるわけでなく、朝鮮戦争勃発直後に起こった米国軍による民間人約250人もの虐殺事件(ノングリ虐殺事件)を、エンタメ要素を一切排し、ただただ淡々と描いている。

変にドラマチックな演出などを加えていない為、よりリアル。米軍に救われるのであろうと信じ込み、彼らの指示通りに避難していただけの村民たちの戸惑い、ショックがハッキリと伝わってくる。

銃撃による虐殺シーンがそこまで残酷にしつこく描かれていない事だけが救い。

アメリカ軍がこの事件を、生存者による手記によって明るみになるまで約50年間も隠蔽し続けていたというのは驚き。でも、映画で描かれている限り、これは誤射ではなく、民間人と認識した上での、残酷な大量虐殺以外の何物でもない。

作品内では、何故、彼らへの戦闘機からの機銃掃射、機関銃による一斉射撃を米国軍上官が指揮したのかの理由が描かれていないが、Wikipediaによると、避難する村民たちの中に北朝鮮兵が混じっていると疑ったからだとか・・。

いずれにせよ、なんたる悲劇・・。
日米軍が直接対戦していたという違いはあったにせよ、第二次世界大戦終戦時の沖縄本土でも、一般人の虐殺が横行していたという史実も頭にふとよぎる。

村民たちが身につけている白い衣装が印象的。また、村民たちが線路上を避難途中、また、ラストシーンで大空を行く鯨の親子のシルエットは、一体何を象徴していたのだろう・・
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