くう

小さな池 1950年・ノグンリ虐殺事件のくうのレビュー・感想・評価

3.9
1950年。朝鮮戦争中、韓国・忠清北道の老斤里で、300人余りの民間人(子供や年寄り含む)が米軍によって大量虐殺された。


この映画はその老斤里虐殺事件を完全に住民目線から描いた作品。

住民目線なので観客の心も彼らと共に動く。


初めは里ごと家族のような仲の良い人々の生活が描かれ、突然、日本語で避難勧告され、わけも(言葉も)分からず米軍を信用して避難していたら攻撃される……という……ネタバレも何も、それがこの作品の全て。

事件の概要はサラッとテロップで語られるが、本当にドキュメントのように飾りが無いのである。

仕方ないな。と思う。これが、あの日のあの人たちの現実だったのだろう。どんなに怖かったか。目の前で自分より先に子供が殺される怒りはどれほどのものだったか。


ただ、こんなことは二度とあってはならないと心に刻むだけ。


当時、勢いのあった北朝鮮軍に対し、米軍と韓国軍は敗走中。戦闘地域にあった老斤里には北朝鮮兵が潜んで攻撃してくると思われていた。というのが事件の切っ掛け。

アメリカも韓国もこの事件を長い間隠蔽し、近年になってやっとマル秘扱いだった資料を解禁。「戦闘地域を移動するすべての民間人を敵とみなし発砲せよ」との当時の命令の事実が明らかになったという。


つい先日配信で鑑賞してUPした『チスル』は、この映画の配信を探している時に見つけて、先に観た作品。この時期、この戦争の影で多くの民間人が殺害され、事実を隠蔽されている。


戦中、パルチザンを疑われて民間人が大量虐殺される例は世界中にあるが、なぜどこから見てもヨボヨボの老人から赤ちゃんまで手に掛けるのか。

アカと決めたら部落ごとアカであり、全て薙ぎ払わなければ気が済まない人間の残酷さ。


実際に手を下す下層兵はPTSDに長く苦しむことも多いという。この作品の米兵の描き方は、そういう人たちにも配慮したのかもしれない。


空をゆったりと泳ぐ黒いクジラが人々の魂を運ぶ雲のようで……。

他のユーザーの感想・評価

誰か一人を主人公に立てるわけでなく、朝鮮戦争勃発直後に起こった米国軍による民間人約250人もの虐殺事件(ノングリ虐殺事件)を、エンタメ要素を一切排し、ただただ淡々と描いている。

変にドラマチックな演出などを加えていない為、よりリアル。米軍に救われるのであろうと信じ込み、彼らの指示通りに避難していただけの村民たちの戸惑い、ショックがハッキリと伝わってくる。

銃撃による虐殺シーンがそこまで残酷にしつこく描かれていない事だけが救い。

アメリカ軍がこの事件を、生存者による手記によって明るみになるまで約50年間も隠蔽し続けていたというのは驚き。でも、映画で描かれている限り、これは誤射ではなく、民間人と認識した上での、残酷な大量虐殺以外の何物でもない。

作品内では、何故、彼らへの戦闘機からの機銃掃射、機関銃による一斉射撃を米国軍上官が指揮したのかの理由が描かれていないが、Wikipediaによると、避難する村民たちの中に北朝鮮兵が混じっていると疑ったからだとか・・。

いずれにせよ、なんたる悲劇・・。
日米軍が直接対戦していたという違いはあったにせよ、第二次世界大戦終戦時の沖縄本土でも、一般人の虐殺が横行していたという史実も頭にふとよぎる。

村民たちが身につけている白い衣装が印象的。また、村民たちが線路上を避難途中、また、ラストシーンで大空を行く鯨の親子のシルエットは、一体何を象徴していたのだろう・・
舟子

舟子の感想・評価

3.5
えー!もうやめてー!一般人になんでそこまで…普通に平和に暮らしたいのよ
mh

mhの感想・評価

-
朝鮮戦争の初期に起こった民間人虐殺事件を再現している。
誇張のない農村ドラマと、容赦ないグロゴア表現の対比がすんごい。
虐殺のとこ、「タクシードライバー」や「ゴッドファーザー」のように血の色調(赤の彩度)を落とすために銀残し風味の画面になるんだけど、それが現実にフィルターがかかったようにも感じられて救われる。夜の場面も血の色に配慮したものだと思われる。
で、また反日ぶっこんでくるんでしょうと決めつけてかかってたので、ぜんぜん反日なくてかえって不安になってしまう。
この事件における虐殺者はアメリカ軍なんだけど、そのアメリカ軍ですらもサゲ表現はなくって、どうかというと、コミュニストをちょっと持ち上げてる始末。
妄想ハッピーエンドは最近の流行りなのでしょうがないかもしれないけどそのおかげで後味がエンタメ映画っぽくなってる。戦争が始まるまえの幸せ描写がわざとらしくなくてよかったのに、なんで最後は全力でやってしまったんだろうな。テーマから逆算してもそれはいらなかったような気がしてしまう。
アメリカ人と韓国人の間に日系アメリカ人(もしくは在日韓国人)が立って、日本語を使って意思疎通しているのは素で驚いた。そうだよね、当時はそれが理に適ってるやり方か。韓国産の戦争映画もけっこう消化してるけど、初めて見たので余計びっくりした。
少女が撃たれて、見ているこちらはしばらく言葉が出ないんだけど、あれはホタルの光を狙ったってことか? とかじわじわと疑問が膨らんでくるのはなんとかして欲しかった。
クジラとか、急にエンタメ化するラストふくめ、ちょいちょい意図不明なのが気になった。監督が急に変わったといわれたら納得してしまうんだけど。
面白く見たんだけど、好きでも嫌いでもなかったっす。
朝鮮戦争当時発生した米軍による一般市民に対する無差別爆撃事件“老斤里(ノグンリ)事件”を映画化。

韓国中部にあるのどかな村、老斤里(ノグンリ)に逃亡してきた米軍部隊。
彼らは村人の中に、北朝鮮のスパイが紛れこんでいると疑い、村人を無差別に銃で乱射し始めるのだった…。

一切のエンタメ性や、後付けの演出もなく、後半は淡々と村人が逃げ惑い、銃弾に倒れていく様を描く。
それだけに極度の緊迫感と理不尽な怒りがこみ上げてくる。
なぜこんな素朴で人の良い村人がこんなにも犠牲に😨

事件後50年に渡り、米国・韓国両政府とも事件の存在を隠し通していたが、2000年にピューリッツァー賞を受賞したAP通信の記者の調査で真実が明るみに出た、という。

そして、歴史の闇を明るみにする趣旨に賛同した有名俳優が出演を申し出たという。
ユ・ヘジンやムン・ソリ、ソン・ガンホなど(ソン・ガンホはどこに出てた?😅)。

ただし、韓国映画らしく、最後は微かな希望を描く事も忘れない。

あまりの衝撃的な歴史の実話に打ちのめされてしまいました😨
MAAAAA

MAAAAAの感想・評価

4.5
ただただひどい。
朝鮮戦争中に実際に起きた話

言葉になりません。

しかも韓国政府も米軍も
虐殺した事をしばらく認めてなかったって

腹がたって仕方ない。
戦争ってなんの為にしてんだろう?
誰のために?
Takumi

Takumiの感想・評価

3.0
理不尽すぎる。こんなにも衝撃的で恐ろしい実話、まったく知らなかった。戦争下とはいえ…これは…😰スコアをつけていいものかと悩むほど💦

1 9 5 0
‾‾‾‾
2022.0722
監督イ.サンウ
出演キム.スンウク
  カン.シニル
  ムン.ソングン
  キム.レハ
  ムン.ソリ
  ソン.ガンホ
南北朝鮮戦争が 勃発して間もない
1950年7月、朝鮮半島の 真ん中あたりにおる 小さな村があった。
世間の事情など 知るはずも無く 全国童謡大会に向け 歌の練習に夢中の ヒョニ先生と村の子供たち。
米軍が敗北し戦線は邑内まで下がり村には疎開命令が下される。
遠足に出掛ける気分で行った避難が結局....
米軍が 守ってくれると 信じて 7月猛暑の中、南の方に 向かう村人たち。
しかし、その信頼を裏切って 村人の頭上に爆弾💣が 落とされ 防御陣地にいた米軍たちは 村人に向けて 乱射し始める😱
村人たちは 理由も知らずに 次々と倒れていく😭

実は、避難民の中に 民間人を装った 北朝鮮🇰🇵軍が 侵入したという 未確認情報を入手し アメリカ🇺🇸軍 第25師団長 ウィリアム.B.キーン将校の命令で 村人たちを殺害した😱


休憩中に突如、空爆劇と射撃を受け 老人、女性、子供関係無く 無差別に殺害する😭

300名ぐらい居た 村人たちで 生き残ったのは たった25名であった😭
地獄の様な 恐怖であっただろう😭

有名俳優が ノーギャラで 大勢出演している🤗


DVD📀


2022年 210本目❗️
しゅう

しゅうの感想・評価

3.7
朝鮮戦争における罪もない村人たちの実際に起こった虐殺事件を描いた作品。

86分と短い中に、ほとんど事件の経緯のみ淡々と描かれる。そのため誰かに感情移入する時間がほとんどなかったが、だからこそ事件の唐突さがより伝わって恐ろしく感じた。
前半ののんびりとした村人たちの生活から一転、後半の虐殺シーンは言葉を失う。

たくさんの有名な俳優さんたちが参加している。この映画の持つ意味の大きさをしっかりと受け止めたいと思った。
味方?殺戮者?

ずーっと観るのを後回しにしていた作品。
こういうのは観たくないけど、ユ・ヘジン&イ・ソンミンが出ているとなると避けられない。

1950年7月の朝鮮戦争中に起きた老斤里虐殺事件が残酷に淡々と描かれる。

内容は至ってシンプル。
山奥の村でひっそりと暮らしていた数百人の民間人が、ここは戦場になるから退去しろと言われて避難していたら、その道中にアメリカ軍に虐殺されてしまうというもの。

相手がアメリカ軍っていうのが、めちゃめちゃエグかった。
しかも誰に攻撃されているのかが最初はわからない。
最後までアメリカ軍が助けてくれると信じて疑わなかった人も多かった。

近くで戦闘が起きている訳でもないので、半信半疑な感じで避難する民間人たち。
切羽詰まった雰囲気でなく、子どもたちはどこかお気楽にも見えた道中。
やっと合流できたアメリカ兵に何故か荷物検査をさせられる。
そして、線路沿いで待機していると、突如始まる爆撃と無数に浴びせられる銃弾。

イ・ソンミンの倒れ方がかなり悲惨で心打たれた。(演技上手い)
ユ・ヘジンは記憶が正しければセリフもなく、呆気ない最後を演じる。

もちろん2人の他にも今作はジャケ写でもわかるように、たくさんの韓国の俳優が集結して作られている。
今でも主演を張っている俳優から名バイプレーヤーまで。

1番有名どころだとソン・ガンホ。
女性陣ならチョン・ヘジンやムン・ソリ。
好きな脇役ならカン・シニルやチョン・ソギョン。

感想としては、やっぱり鑑賞後は気分がどよーんとしたけど、こんなことが実際に起こっていたなんて勉強不足であまり知らなかったし観れてよかったです。
TF

TFの感想・評価

-
 これスコアレスですね•••
 作品自体も愚直なまでに
 淡々と進んでいく

 朝鮮戦争が勃発して間も無い
 1950年7月に起きた
『老斤里(ノグンリ)虐殺事件』
(韓国人民間人約300名が惨殺)

 この惨劇を世に知らしめる 
 ために作られた🎥

 民間人に避難を指示しておきながら
 アメリカ陸軍の第25師団長
 ウィリアムBキーン少佐は
「戦闘地域を移動するすべての
 民間人を敵とみなし発砲せよ」
 という命令を下す
 
 疑わしきは罰せず ならぬ
 疑わしきは罰せよ•••って🥺
 北朝鮮🇰🇵とのゲリラ戦に
 手を焼いていたとしても
 あまりに酷い

 しかも、この大虐殺
 50年以上米軍は隠蔽していた!
 本事件の生き残りのリークによって
 明るみになるって•••

 朝鮮半島の20世紀(1900年代)
 どこの国よりも重過ぎます😭
 朝鮮戦争今でも停戦中•••
 終結への道は険しそうですね😢


参考〜朝鮮半島(韓国)の20世紀〜

1914年 国権喪失
1938年 ハングル教育禁止
    (日本語の強要)
1945年 日本軍の敗戦により光復
1948年 大韓民国政府樹立
1950年 朝鮮戦争勃発
1953年 朝鮮戦争休戦協定
1965年 軍事クーデター
1980年 光州5.18事件
1988年 ソウルオリンピック
1990年 ソ連と国交樹立
1991年 国連加入
1992年 中国と国交樹立
1993年 軍事政権の終焉
2002年 サッカーW杯日韓共同開催
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