要

日常対話の要のレビュー・感想・評価

日常対話(2016年製作の映画)
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正直もっと個人的な記録フィルムかと思ってた。レズビアンの母とその娘の微妙な関係を描写する…と言えばもちろんそうなのだけど、ふたりの対話を通してじわじわ炙り出されてくるのはもっと普遍的な、人間社会が内包する諸問題なのだった。
文化の中に根ざしている女性蔑視、マイノリティに向けられる冷ややかな目線、DV、性虐待、職業蔑視、児童労働まで。
他人事ではないというか、この悲しみには社会が関与しており、その社会ってつまり先祖たちだったり私達一人ひとりのことなんだよね…と気づくというか。

台湾の家庭料理いいね。この作品、対話という部分に日常の食事風景を絡めてあるのが印象的。日々の食事にも使っているダイニングテーブルを挟んで、娘が母に涙ながらに訴える対話シーンではもらい泣いたけど、お母さんの後ろにグリーンの大同電鍋がしっかり鎮座しているのが気になってしかたなかった…(欲しいからです)
今度台湾行ったら、私房家常菜店みたいなとこで食べてみたい。

姪っ子や孫ちゃんの存在が希望の萌芽を感じさせて救いがあった。
お母さんが、どうせ理解されないことだと長年口を閉ざしてきたことがご飯のときの「日常対話」になる日が来るといいですね。

親子というのはつくづく不思議な関係だなと思った。子を産んだら誰もに母性が芽生えるというわけでもないし、1人の人として相性もあるだろうに、やはり親からは愛されていると感じていたいし、わかりあえないと分かった後でもなかなか諦めることができない。娘さんのそういうエネルギーから生まれた作品であることは間違いない。

失われゆく台湾土着の葬送文化「牽亡歌陣」について知る機会ともなった。死者の魂を召喚し、苦しみから解放して極楽浄土に導く儀式を行う葬式陣頭。それを率いる母と幼い頃から一緒に働いてきた娘。人の死で商うこの職業もまた、蔑まれているものらしい。

・台湾歌劇も気になった
・台湾のお墓始めてみた
・黄色い冥銭をお焚き上げ。香港とか台湾てめちゃくちゃ色んなもの焚きあげるイメージ。
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