亘

天国から来たチャンピオンの亘のレビュー・感想・評価

天国から来たチャンピオン(1978年製作の映画)
3.7
アメフトのスター選手ジョーはある日不慮の事故で亡くなってしまう。しかし天国の経由地の担当者のミスで彼が死ぬには50年早かった。ジョーはスーパーボウルに出るため大富豪ファーズワース氏の体に乗り移る。

題名からスポ根映画かと思ったら意外にコメディ。ジョーが乗り移ったファーズワース氏は大企業の社長で工場の環境被害の責任を追及されている。もちろんジョーには社長としての判断力がないから答弁はめちゃくちゃ。ついには経営会議でアメフトになぞらえた話をし始める。不倫関係の妻と秘書からすると殺したはずのファーズワース氏が生き返って(中身はジョー)いるから驚き。時々現れる天国の使者はジョーにしか見えないし声が聞こえない。こんな感じでそれぞれの見ている世界が微妙に違った状態で話が進んでいくからギャップのある会話が面白い。

ファーズワース氏としてスーパーボウル出場を狙う場面に入ってからは男の友情とかスポ根の要素が出てくるけどそれでも基本はコメディ。変人として有名な大富豪がアメフトチームの花形クォーターバックになるんだから選手からの風当たりは強い。選手の過剰に敵意むき出しな姿勢は笑えた。それでも中身はジョーだからポジションを奪ってしまう。

終盤スーパーボウル直前からも想定外の展開が続く。まずファーズワース氏の本当の死期が訪れる。ジョーのスーパーボウル出場の夢が断たれるかと思いきやまた別の人に乗り移る。ラストも意外な展開でハッピーエンドだったけど不思議な雰囲気でもあった。

原題を直訳すると「天国は待ってくれる」でこっちの方がしっくりくるような気がする。終盤から天国の使者たちはことあるごとに「運命」を口にする。要するに宿命には抗えないということなんだけど、終わり方を見ると「あれがジョーの宿命だったのか?」とどこか疑問が残る。それでも全体的に完成度の高い作品で楽しめた。

印象に残ったシーン:天国の経由地のシーン。経営会議のシーン。ジョーがスーパーボウルに出るシーン。ラストのジョーとベティの会話。

余談
当初はモハメド・アリを主人公にボクシングで作ろうとしたけどアリに断られてアメフトにしたそうです。
作品に出てくるロサンゼルス・ラムズは実在のチームで、舞台の1975年には西地区を制覇してますがスーパーボウルは優勝してないそうです。スーパーボウルのシーンはラムズのプレシーズンゲームのハーフタイムに撮影したそうです。
亘