やま

ウィーアーリトルゾンビーズのやまのレビュー・感想・評価

3.5
音楽や映像が巧すぎる。見せたい画を優先するために用意されたような物語設定。これはこれで面白い。が、個人的に気になったのは登場人物たちの内面性のおざなり感。リトルゾンビーズたちの、「極めて空虚だが反骨精神は人一倍にある」という、ステレオタイプなアナキズム的キャラクター性に対する物足りなさ。彼らにニヒリズムを徹底させるなら、そもそも徒党を組んでマン引きをしたり、ましてやバンドを組んで演奏したりするバイタリティを付与することはしない。

個人的に1番気になったのは、ゴミ収集車の事故シーンで、1度見限った人生を、女の子=母性をヒカリが強く求めることによっていとも簡単にコンティニューしてしまえたように見えることだ。偏屈を承知でツッコむと、あそこでNOを選択した人間が次の瞬間、まるで聖母マリアによって洗礼を受け生まれ変わるという一連の流れによって、元からヒカリの内面にあった「人生に対する絶望感」が矮小化するような気がしてならなかった。現実のトラウマはあんな風に軽々しく、ひょいと乗り越えられるほど甘くない。

ゲーム的リアリズムに由来するRPG風のテンポ感や8bitな質感を優先するあまり、登場人物たちの内面に肉薄するようなリアリズムを、全体的に取りこぼしている印象でした。

結局のところ自分のような人間には「リリイ・シュシュのすべて」や「田園に死す」なんかがお似合いなのかもしれない。
やま

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