のん

ウィーアーリトルゾンビーズののんのレビュー・感想・評価

4.1
不条理を生き抜け

近所のシネコンではなんと6日間で上映が終了するようで、これは多分歴代最短の打ち切り記録ではないかと思うのだが、おそらく驚異的な不入りだったのだろう。


なんとも悲しい現実であるが、『ウィーアーリトルゾンビーズ』は、ある意味で劇場向けの映画なだけに多くの人が映画館で観られるチャンスが失われてしまうとは非常に残念。


というのも、この映画、音の設計がとても細かく調整されていて、劇場の色んなところから音が聞こえるのである。邦画でこんなに音の調整がされている例はあまりないかもしれない。



内容としては、主人公の心の早口な語りがこれまた絶妙にヘンテコかつセンスのある言葉の数々で紡がれていて、コメディとまではいかないんだけど、かといってシリアスでもない良い塩梅の映画になっている。



劇中で何度もカフカが引用されるように、人生は不条理で終わりがない無理ゲー。大人たちがゾンビのように「夢を持て」など無責任な言葉を発信する世の中に、この映画が突きつけるテーマはとても皮肉が効いている。

ミュージックビデオのような奇妙なアングルと、なかなか過激な展開も味わえる珍味な映画ではあるので、皆さんも映画館で噛み締めてください。
のん

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