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ウィーアーリトルゾンビーズのryacのレビュー・感想・評価

4.9
都内以外では20日で上映終了館もあるってマジかよ!?

とにかく素晴らしいの一言。『桐島』『カメ止め』に次いでの日本3大青春ゾンビムービーって感じ。「人を選ぶが~」というありきたりな枕詞をつけるのも正直癪なくらいドハマりしたけれど、それでもあまりに既存の作品とは乖離した、通常の映画としてのフォーマットを意図的に崩壊させた作品であるため、そう言わざるを得ない。

『そうして私たちはプールに金魚を、』という伝説的な作品でかつて一世を風靡した長久監督による初長編作。『プー金』で最大限度の「エモさ」を描き切った監督ならではの現代日本を舞台にした青春冒険劇でありつつ、「エモ」という概念そのものを批評的な視点で論じた作品でもある本作。

葬儀場で出会った13歳の少年少女たちが全てを投げ打って旅に出て、やがてバンドを結成し……という筋書き。
予告編からも分かるように(フォークルの『帰ってきたヨッパライ』のボサノヴァアレンジが流れるトレーラーも最高)、8bitのテレビゲームをフィーチャーした独特な美術や音楽、構成(「チャプター」は「ステージ」とされる)が本作の唯一無二の持ち味。
序盤のマンションを主人公たち4人が散策する場面ではドラクエみたいに縦に並んで歩く様子を俯瞰視点で撮るカットがあったり、いきなりミュージカルになったり、そこに登場するホームレスたちはあからさまにイウォークだったり、コンビニの店内がやたら毒々しいメルヘンなインテリアだったり、いとうせいこうがポリゴンになってほぼ本人役で登場したり、とにかく息もする間もないケレン味の連打。
ただそれも小手先だけの目配せ的なオマージュやパロディでは決してなく、あまりに辛すぎる現実を『ゲーム』と解釈して乗り越える子どもたち=リトルゾンビーズの精神の現れ。個人的にはオープニングクレジットの8bitドットアニメの時点で感極まってしまった。

ところで公開に先立ててyoutubeに公開された作中バンドリトルゾンビーズのMVは百万再生を超えている。ヴォーカル・ヒカリの歌は監督の演技指導であえて棒読みぎみにしているとのこと。
スワロウテイルに出てきたバンドYEN TOWN BANDが現実でもヒットしたみたいに、これからリトルゾンビーズが映画の枠組みを乗り越えて活躍するかもしれない。
本気でそう思えるほど劇中歌のクオリティはリアリティがあるものだし、ストーリーも「子どもが絶望しない物語を作りたい」
という言葉通り常識外れでアバンギャルドでありながらも単なるニヒリズムに傾倒せず、ずっしりと余韻を残すメッセージを含む。そして後にも先にもこの映画でしか見られない美術、演出。サンダンスの名は伊達じゃない。

好き嫌いはともかく、この映画が作られたことそのものに感謝したくなるような、個人的には一生胸に残る作品でした。
5年後10年後にカルトムービーとして語られることは確実(!)だと確信してるけど、今シアターでかかってるこの時に見られてほしいです。今今今今今!!

あまりにぶっ飛ばされたため超久しぶりに投稿。
#埋もれさせるなゾンビーズ!!