ばふらー

ウィーアーリトルゾンビーズのばふらーのレビュー・感想・評価

4.0
生きてる実感が無いのは、ゾンビと同じだろうなぁ。
世間で言われる大人になり損なったまま社会人になった身としては、痛快で、懐かしくて新鮮な、楽しい映画だった。

異世界転生みたいに他所の世界ではなく、クソゲーなこの人生を〈心〉と共に進む。草原を歩く彼らが、広大なワールドマップのどこへ行くのだろう、とぼんやりと考えた。


以下、ダラダラ感想。

リトルゾンビーズに失うものは無い、もう何も持っていないから。
そこからバンドを組んで音楽やり始める姿は実にユーモラスだが、これ笑っていいのか?と度々思ったり。
8bitの電子音はかつて遊んだゲームの面影があって懐かしい。冒険が始まろうとする、テンポの良いピコピコ音は夢と希望に満ち溢れていて、ワクワクする。同時に、どことなく寂しくもある。
全体的にカラフルで印象的なグラフィックが多く、MVや写真集を思わせる画づくりに圧倒された。実験映画を思い出させる合成やカメラワーク、奇抜なキャラクター達の演出(序盤は慣れるまで目で追い切れなかった)。
小道具ひとつひとつまで見ていて楽しい。例えばオーパーツ。4人の中でも飛び抜けて存在感のあるイクコを目で追っていたのだが、彼女が持ち出した白い飛行機のキーホルダーは、青空に映える彼女らしくてとても良い。中島セナさん、何をしていてもフォトジェニックな出で立ちで、イクコにピッタリだった。

感情の無い4人の気持ちを誰もわかりきることが出来ないように、重要なのは共感ではなく、個々がどう感じたか。この作品には体験を消費する現代らしさが強い。インタビューやモノローグの場面が多く、YouTubeを見たりノベルゲームを読み進めたりしていくような感覚だった。終わってしみじみするより、観ている〈今〉を楽しめるギミックが多い。
情報に溢れ、尚且つ大量消費社会である現代日本のネガとポジが強調されている。中身のないまま拡散された情報と思想に感染し、私刑を与えようとする現代病の人々にゾッとする。駅構内のスマホゾンビは自分も該当するので、笑えるけど笑えない…。

結果的に喪失を受け入れる冒険を乗り越えた4人は、ゾンビから蘇生したと言うより、一度死んで生まれ変わったのだと思う。