富田健裕

人間失格 太宰治と3人の女たちの富田健裕のレビュー・感想・評価

3.6
ヤル、ヤル、ヤル。
吸う、吸う、吸う、吸う
呑む、呑む、呑む、呑む、呑む、呑む、呑む、呑む。
そして、書く。

会得と収得は手放の為にこそ、構築と造作は破壊の為にこそ。
「死ぬかと思った」ところにだけ書くべきモノがある。
自ら進んで矛盾に浸り込み、渦中で笑顔の万歳三唱。
数多の口説き文句さえ嘘ばかりをつき続ける孤独の稀釈に過ぎず。
気付けば筆を握るべき手で自分の首を絞めている。

太宰を翻弄していると思しき三人の女は如何に。
翻弄しているのか、されているのか、定かにならない。
欲していたのは、我が子か、血か、はたまた己か。

三島由紀夫との酒場の一騎打ちはかなりの見応えがある。
「あんたは民衆の前で死ねるのか」
あんた若い頃からそうだったのかと。
臆病なくせして無駄に果敢な太宰の人間味がおまけつき。

外連味たっぷりの演出と、色彩豊かな映像が良かっただけに、ラストの見せ方にはややクドさを感じてしまった。あれも氏の往生際の悪さの表出だろうか。

逃げろ太宰。
斜陽は己の肩に手を置いて称賛の言葉を浴びせながら、暗たる過去に炙り火をあてて貴殿を苦しめるだけです。
身が持たぬなら、いっそ、一思いに書いて、逝けば宜しい。
富田健裕

富田健裕