『失格への合格者』
それは、それは、儚いことでした。
何かを背負うということは、私には耐えきれない。煮え切らない。
重いのです。
その時、私が俯いたときに、垂れ下がる髪の揺れが物語っているはずなのです。
私の安穏はこの丘ではなかったのです。
静かに晩酌をしているのに。
脳の中では爆音のセリフが無残にも苦しみのファンファーレを奏でるのです。
私は永遠に独り。
私の指に挟まれたペン先から生まれる文字の舞のバイタリティは、薄っぺらい人の付き合いにこそあれ。
恋する心に腕を強引に突っ込み、力づくでもぎ取るのです。
これを世間では愛というふうにみえているようですが。
私みたいなのは永遠に、
安楽の椅子に座れない文豪達の吸い込む空気の部屋の隅っこにいるのがちょうどよいのです。
積もりに積もった白い雪に赤い血を見たとき。
あの時、私は、やがて溶けていく。
そして忘れ去られる運命。さだめ。
せめて、悪あがきをしてみようと思ったのです。
この血が口からでるうちに。でるうちは。
これぞ、中央の椅子に座る文豪と。