フィクションのように堕落したイメージの人生を演じた「破滅型」太宰治をフィクションとして描いている。あくまでもイメージとして。
太田静子にも、太宰との関係にリアリティはなかったのか。
それを演じる沢尻エリカは、現実生活でクリエイターの高城剛と結婚していたが、そのときもそうだったのか。
太田静子との娘である太田治子と、妻との娘である津島佑子はのちに作家になる。字幕でもいいのでその事実を紹介してもよかったような気がする。
ともかく「イメージ」先行で、「どうだ」といわんばかりの映像も演技も、自分には合わず、特に後半がダレた気がした。
かっての森雅之(有島武郎の息子)が演じた浮気症のダメ男とそれを世話する高峰秀子の『浮雲』にこそリアリティを感じる。
あの屋久島の長雨も、心象風景として忘れられない。
自己の人生にもリアリティを感じにくくなっていた太宰治だとすれば、こういう映画もアリかもしれない。
ただ、編集者や業界人の集まるバーのシーンは、ちょっとクサく感じた。