ワンコ

人間失格 太宰治と3人の女たちのワンコのレビュー・感想・評価

4.0
たかが太宰、されど太宰、でも、やっぱり太宰
昔、太宰作品に関する文章をチラッと読んだことがあって、太宰の作品のすごいのは読者の評価を全て受け入れてしまうこと…のように書いてあったような気がする。
確かに、太宰の作品は、読者の感情や感想を…受け入れる…というより、飲み込んでしまう感じがする。
彼の小説や登場人物や構成やストーリー展開への賛辞も批判もだ。

僕はさほど太宰ファンというわけではない。
それで、僕の曖昧なヴィヨンと斜陽と人間失格を読んだちょっと曖昧な記憶をベースに想像してみて、そして、この映画を観て思ったのは、三人の女性は、実際は、こんなに美人で妖艶ではないのだが、太宰の目にはこう映っていたに違いなしい、太宰にとっては、こういう女性たちであったに違いない気はする。

太宰の小説はなんか不思議だ。
太宰の体験などが散りばめられてるに違いないとも思う反面、実は、太宰が自分で作り上げたストーリーに沿って太宰が生きたのではないかとも思わせる。

映画としては、実は賛否が分かれるのではないか。
感情移入しやすい人で生理的に受け付けない人がいるであろうことは勿論、太宰好きの人にとっては、この人物像がカッチリはまるとも思えないからだ。
それに、人間失格の誕生はもう少し違うストーリーがあったような気もするし…。

こんなことを書いてて思うのは、自分は太宰ファンではないと言いながら、あれこれ考えてしまって、実は太宰が気になってしょうがないのは我ながら笑えることだ。

お笑いタレントで読書好きの人に太宰ファンが多いのは、なんか分かる気がする。
きっと自分の人生に重ねたい人もいるのだろう。

静子の口から、「不良」の言葉が出たかどうかは定かではない。
でも、わざわざこの「不良」という言葉を入れてきたところは、なんかきめ細かい気がする。
太宰は本当は死ぬつもりはなかったのに、富江が…というのも、良く言われることで、また頭がグルグルしそうだ。

そんなことも色々考えてプラス0.5だ。
ワンコ

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