YUMiC

人間失格 太宰治と3人の女たちのYUMiCのレビュー・感想・評価

3.6
✍︎2020.09.08

中盤まではあまり身が入らなかったけど、
女たちと太宰がより絡み合って、
太宰の苦悩が見えてくる
後半からは思っていたより面白かった。
それは私が何よりも太宰治を事を
知らなかったからなのだとも思う。

太宰治を文学を少し読んだ程度、
自殺をした文学作家程度の
認知の私には勝手なイメージがあって
硬派で生と死に苦悩したが故に自殺をした
作家なのだとばかり思っていた。

それがなんの、ただの女狂いの
自分勝手なクズ男。
ここまでの人間だったのかという感じ。
こんな人があんな作品の数々を
生み出していたのかと。
彼こそが本当の人間失格だったんだと
思い知る作品。

そしてクズだけど才能がある人間に
やっぱり女は惹かれていくのかなと思った。
こんなクズでも奥さんも
愛人たちも決して離れようともせず、
共に死を選ぶほどなのが不思議で
ならないけど、それ程の魅力が
太宰にはあったんだろうな。
私が奥さんなら真っ先に離縁だけど、
やっぱり誰よりも才能があると信じ、
彼の才能の為に自分の人生は二の次。
そんな愛、到底理解は出来ないけど、
その愛たちが、きっと彼をここまでの
作家にしたんだろうな。

宮沢りえが病院から家に帰り、
泣きながら子供たちを抱きしめるところが
この映画の1番だった。
あそこがあるから、
この映画は救われてる、
そんな気がするほど素晴らしかった。
太宰が死んだ日、日常を過ごす風景。
やっと呪縛から解放されたかのような、
太宰治という存在ではなく
彼の本当の才能にやっと出逢えた
そんな清々しさ、
やっぱり宮沢りえの存在は本物だなと
思わずにはいられなかった。

映像と音楽が、
過度ではなく品のある安定の蜷川実花
ワールドで美しくよかった。
YUMiC

YUMiC