すずき

ジョジョ・ラビットのすずきのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
3.9
第二次世界大戦末期のドイツ。
ナチス党に憧れる臆病な少年・ジョジョの頭の中には、自分を勇気づける"想像上の友達"アドルフ・ヒトラーがいた。
ある日ジョジョは、亡き姉の部屋にある秘密の扉の存在に気づく。
その扉の先にいたのは、ユダヤ人の少女エルサ。ジョジョの母親に匿われていたのだ。
心の中のヒトラーは「彼女を密告せよ」と叫ぶが、ジョジョは彼女に惹かれていく…

動乱の時代を生きた少年の、恋と成長を描いたジュブナイル映画。
監督は「シェアハウス・ウィズ・バンパイア」「マイティー・ソー バトルロイヤル」のタイカ監督。
監督自ら演じるヒトラーが主人公と共に悩んだり走ったりと、ユーモラスな演出がコメディを得意とする監督らしい。
音楽の使い方が洒落てるのも相変わらずだ。

全体的に面白かったしクライマックスはグッと込み上げるものがあった。
だが、傑作とまではいかず。流石に鑑賞前にハードルを上げ過ぎたか。
期待していた声を上げて笑える様なコメディではなく、ほっこりする系コメディだったのも原因か。
傑作を期待したが良作だった、という点では「この世界の片隅に」と同じだ。戦時中の日常から始まりクライマックスでは戦火に見舞われる、という描き方も少し似ている。

スカーレット・ヨハンソン演じるジョジョの母親がカッコいい!
地味めな服装のキャラが多い中、彼女は明るい色目のコーディネートを帽子から靴までバッチリ着こなす!
見た目だけじゃなく、戦争の愚かしさを感じ秘密裏に反ナチス運動をしてて、誰よりも愛と自由を信じる自立した、カッコいい女性。
最初っから最後まで印象的だった。

やっぱ戦争って無惨で悲しく、いい事なんてないんだな、と思いました。
私は普段は反戦平和ラブ&ピース、などと綺麗事を言うキャラではないのだけど、映画を見てる最中だけでもそう思えたのは、映画のメッセージの伝え方が上手いから?それとも私が単純なのか。
とりあえず、もし戦争するにしても、上手い負け方、というものは必要だな。
勝てる見込みも勝つ意味も無い戦いに、軍人でない人々(それも子供まで!)を駆り出して戦う、というのは愚かな悲劇以外の何者でもない。
臆病にも脱兎のごとくの逃げ出し隠れても、最終的に生き延びられれば、それこそが勝利なのだ!