岡田拓朗

ジョジョ・ラビットの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.3
ジョジョ・ラビット(Jojo Rabbit)

愛は最強。

誰もが純粋無垢な幼き弱き目で周りを見ることができたら、少しずつでもこの世界が優しい世界に変わっていくかもしれない。
そんなことを感じずにはいられないジョジョを全力で応援したくなる愛に溢れた映画。
全世界の全人類がこの映画を観たら、人は争うことではなく、人を想い寄り添い合うことが大切だと気づくはずだ。

素敵だなという思いが湧き上がってきて泣けて、優しいなーという気持ちが湧き上がってきて泣けて、辛いなーという気持ちが湧き上がってきて泣けて、切ないなーという気持ちが湧き上がってきて泣けて、最後はなんか安心して泣けて…泣くといっても色んな感情を起こしながら泣けた。

ベースはとても優しくて愛に溢れてる微笑ましい物語。
これは戦争映画ではあるんだろうが、戦争を対極に置いた愛を全肯定していく映画でもある。
超シンプルだが、まさにキャッチコピーの「愛は最強」という人間の原点に立ち返らせてくれて、それが真理であることに気づかせてくれる。

ヒトラー独裁政権による戦争を肯定化し正義とする洗脳と少年ジョジョ自身がユダヤ人の一人の女性に出会い感じた気持ちを天秤にかけ、前者の倫理観の欠如と後者の真善美(それこそ愛)を持ちそれに従って生きることの大切さが説かれていく。

反対勢力を抹消することで作られたヒトラー独裁政権(ナチス)では、全てがヒトラー中心に回っており、異常なほどの忠誠心や強さこそが正義の考え方が蔓延していて、そのレールに乗れなければ揶揄される。

こういうナチズムの実態(であったであろうこと)はしっかりと序盤で訴えられるが、それがどうしようもできない状況として重ために描かれてるわけではなく、コミカルめに突破口を作りながら、対極に愛を置いて物語が進んでいくため、誰もが享受しやすい作りとなっているのがよい。

戦争、しかも極悪非道であったナチズムを軸にしてるのに、ここまで誰もにおすすめができる作りになっているのが凄い!

また善悪の判断を自身だけで下せない純粋無垢な少年を主人公とすることで、アドルフから言われることを絶対的に正しいと洗脳されそうになる要素とこの設定の少年だからこそ感じられる純粋な目での善悪の判断の2つの視点をしっかり織り交ぜられていた。
この設定だからこそできる展開、落とし込み、メッセージ性、感動があり、それらが秀逸でウィットに富んだものとなっていておもしろかった!

そしてジョジョが愛を知り、愛によって自らの軸で物事の善悪を知ることができるまでに、抜け目なく丁寧に色んな要素を入れてくれてるから、ジョジョの成長が違和感なく入ってくる。

その一番の立役者となってたのはスカヨハ演じるジョジョの母親ロージーであった。
ジョジョがナチズムに洗脳されようとしているところに対して、ロージー自身の考え方をただ押しつけようとするのでなく、それはそれとして応援するが、根底にある大切なものを本当に上手に伝え、見せていくのだ。
ここにジョジョ(洗脳されていく少年たち)が間違ってるのではないという、理不尽に利用されてしまう人に対しての優しさが込められていたように思う。

いつでもジョジョの味方であり、応援者であり、でもナチスには染まらずに優しくあって欲しいと願い諭していくロージーが本当に素敵で理想的な母親像であり、監督自身が最も尊い存在の化身としてロージーを映したかったんだろうなということがわかる。

だからこそあのシーンは本当に辛かったけど、それもまた現実の異常性を物語るシーンとして、ジョジョの思いにまた新たな変化を与える一つとして、しっかりと意味を成していた。

実際に見て触れて知ることで、自分の真善美を作っていき、善悪の判断をできるようにしていく。
これが最も大事なことであり、根底に持っておかないといけないこと。
時代の流れとか偉い人がこう言ってるからとか、そういうのは二の次。

ジョジョが言われていたことだけを正しいものとして捉えていたところから、色んなものを見て触れて知ることで、上述した自分で善悪をちゃんと判断できるようになっていく。
できることは多くはないけど、小さなことでも自分なりのやり方で、愛する人を救っていく姿が本当に素敵だった。

そしてラストは母親からの話がそのまま伏線として回収されていて、微笑みながら涙を流せる最高の終わり方。

本当によかったし、誰もに観て欲しい作品です。

P.S.
ジョジョ演じた子役の子めっちゃ上手で驚いたし、エルサ役の女の子が強くて可愛らしかった。
あとスカーレットヨハンソンが本当によかった。
よい意味で35歳に見えず、もっと歳を重ねてるように見える。それだけ母親として成熟してた。
美しくもありチャーミングでもあり優しくもありかっこよくもあり強くもある。
全てを体現されていて母親としての理想像そのものでした。
もちろんサムロックウェルもよかったです。
岡田拓朗

岡田拓朗