狭須があこ

ジョジョ・ラビットの狭須があこのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.1
人間は価値観を自分で決めることができないんだな、と思いました。
価値観て、流行りものなのね

私たちはいま、多くの人間が「当時、ナチスは間違っていた」「ドイツで起きていたのは悪夢だった」と認識をしていて、「当時の価値観よりも自分達は進んでいる」「世界はよくなっている」と思っているよな
でも、当時はおそらく彼らも「世界はよくなっている」と思っていたよな

こんなピュアっピュアな子供で生まれて、おまけにたった100年そこらしか生きない生き物。
知識が無意味とは言わないけど、結局みんな経験していないことは絶対にわかってないし、知らないのはイヤだし怖いからイキるじゃん

時代の価値観が生まれて大半がそれに乗る。
乗れないとハミられる。人間、こうやって延々とおんなじことやってくんだろうなぁ。

「価値観のアップデート」を正解と信じて、意気揚々と他人に振り撒いてる現代人たちを見ると、「みんなバラバラの価値観を持っていい」みたいなターンは、生きてるうちには来なさそーよね
また数十年で次の流行来るんじゃないかな。私も数十年で死ぬと思うからわかんないけど

で。
感動でもない、コメディでもない。そして何より主人公は、英雄ではない。
普通の少年が淡々と描かれる映画でしょ
どうやら特別な物語ではなく、普遍的な物語と捉えてほしいっぽいんだよな。

つまり、「ナチスに皆が洗脳されていた、異常な時代」じゃなかったというわけ。
色んな人間の中に、あったのかもしれない。
特別でもなんでもない普通の人たちのなかに、迷いも、気づきも、優しさも、愛も、悲しみも、どれも当たり前にあった。
この映画のように。

それでも価値観は、最後まで誰にも口を挟ませなかった。
戦争に負けて突然「正解」じゃなくなるまで、ヒトラーの姿をした「友達」がずっと彼らの隣に立っていたのかもしれない。

マイペースなヨーキーがもう最強によかったけど、あいつは多分わりと、どう育っても、大人になってもああいうやつじゃん
でもジョジョは、スポンジじゃん。繊細でスポンジみたいな心に、経験値をガンガンぶっ込んでいく子供。

あんな濃い時代を生きた経験値から絞り出した価値観をひっさげて、あれはどんな大人になるんだろうな。
彼のこれからの未来にめちゃくちゃ焦がれてしまうラストシーンでした。
狭須があこ

狭須があこ