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ジョジョ・ラビットのFilmojaのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.5
大戦末期のドイツ、ナチスに心酔する10歳の少年の想像上の友だちがヒトラーで、まるで実在するかのように語りかける。
そんな荒唐無稽なファンタジーをユーモアたっぷりに描き出す、チャップリンをオマージュしたような、どこかナンセンスでおバカなエピソードの数々。
タイカ・ワイティティ監督の温もりとユーモア、そしてシニカルなペーソスが心憎い、エモーショナルな演出にクスクス笑ったり、ホロッとさせられたり。

その根底にあるのは根源的な愛情。
人間を人間たらしめているのは何だろう?肌の色や宗教、文化や言語の違いなど、ほんの些細なことでしかない。
お互いを理解することは、そんなに難しいことじゃない。最初は小さなステップでも、やがて軽やかなタップを踏んで共に踊りだすように。

ナチズムによる扇動をアイドルのようにパロディー化しながら、その選民意識と優生思想の狂気と恐怖もしっかりと描きつつ、それに抗う人々の不遇と不屈、すぐそこにある死の気配と、絶望を突き抜け生きぬく人生を対比させる。
未来への希望となり得る、年齢も人種も価値観も違う子どもたちの心温まる交流。

沈黙することの醜さと、美しさ。
声を上げることの強さと、愚かしさ。

確かにこれは戦時下におけるファンタジーだ。
それでも、現代に通底する差別意識や、どうしようもない閉塞感を真っ向から捉える、極めて誠実な描写に潔さを感じるし、何より監督自身のコメディータッチなサービス精神が、破綻なく織り込まれているのが素晴らしい。

力だけがすべてじゃない。
自分の殻を破って、靴ひもをギュッと結んで。
ウサギのようにすばしっこく、ずる賢く、タイトに生きてゆけ。
僕らは誰もがヒーローになれる。
そう、たったの1日だけだって。

ロベルト・ベリーニの不朽の名作「ライフ・イズ・ビューティフル」に優るとも劣らない、優しい嘘に満ちあふれた感動作。