藤井道人監督って最近話題のヤクザと家族の人だったのか。
主人公たちの板挟みの葛藤を示す演出もハッとさせられたし、映画として非常に出来がいいという印象。王道だけど演出力がすごいので見入ってみてしまう。
こういう本格的なメディア・国家批判の物語ってあまり日本では見られないので、そういう意識の啓蒙として非常に有意義な価値ある映画だとおもう。政治とか政に関する日本の空気感をうまく捉えた作品。
こういうのが当たり前に年一本はシネコンにかかるようになればいいけどね。
エンタメにおいて基本シリアスな社会派サスペンスってウケないとされがちなのだろうけど、この分かりやすさと切実さだからこそウケたのかな。
国が謎に推進する大学病院設立の動きの影で巡る不穏な企み。当たり前のようにメディアに降りかかってくる圧力。それも致し方ないこととする業界の空気感。
ハーフの新聞記者は、問題の追求を1人諦めずやがて内部で葛藤を抱え続けてたある官僚に出会う。
正義と悪の戦い、という分かりやすい構図にしていて、そこが魅力ではあるが同時に悲しい部分でもある。官僚役の田中哲二の悪魔のような悪人具合は楽しいし、官僚サイドの廊下は死後の世界かと思うほど青白く薄暗い。全員ブルーライトメガネかけないと目悪くなりそう。非常に戯画的ではあるけど、その分かりやすさが故に政治やメディアの裏に潜む複雑怪奇さ、特にメディア側の横一列精神に対する批判は割と置き去りに。正直、外国とのハーフで『日本の空気感』に半分門外漢のキャラ設定をそこまで活かしきれてない気が。
（序盤に主人公がその精神性とせめぎ合い葛藤するパートが少しあるので配慮はしてるのだと思う）
『新聞記者』というタイトルだしメディア側の功罪をもっと抉る内容を期待したけど、結果的にメディア＝正義という図式に収束する構成になっていて、またそれを劇的に描けてしまっている事が少し怖い。
