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新聞記者のSpecialistのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
4.4

【2019年10月7日 鑑賞】

時代劇や政治関連の映画っていうのを後回しにしがちではあったんですが、かなり話題にもなっていたので鑑賞。




凄い。
内閣情報調査室(内調)含め、内閣側をここまで勧善懲悪にして描いてる作品がこの日本には無かったと思うし、今このご時世に映画という媒体で全国公開出来ていることが凄すぎる。
絶対金曜ロードショーとかテレビ放映は間違いなくされないであろう映画なので、是非DVDで見て欲しい傑作だと思いました。




インターネットが普及したことで格段に情報が得やすくなり、一個人の意見や感想を発信しやすくなったのは良いことだと散々言われているけど、逆に言うと、機密な情報を隠蔽し、国民を誘導することも容易になったということを忘れてはいけないことを痛感するはずです。
一応フィクションとして描かれてはいるものの、劇中で取り扱われている二つの事件がついこの間問題になっていた事件と酷似しているのでもうノンフィクションにしか見えない。
今年の傑作『ジョーカー』もそうだけど、あまりにも現実味を帯び過ぎてて見てて鳥肌が立つし、気分すら悪くなってくる。(褒めてます)






役者陣の演技の上手さは言うまでもなく、主人公の記者、吉岡を演じているシム・ウンギョンさんが良い味を出してる。
最初は蒼井優さんを起用したかったらしいけど、基にしてる原案の小説の作者、望月衣塑子さんが日本でも賛否ある記者の為に韓国の女優さんを起用してるって話があるらしいですが、個人的には他の国の人から「あんたらの国ヤベエよ」って言われてるみたいでリアリティが出て良かったんじゃないかなと思います。






あと内調で働く杉原(松坂桃李)の上司である多田を演じた田中哲司さんがベストアクト。
彼は彼なりの正義で国民を守ってるつもりなのは理解してるつもりではあるんですけど、悪の組織のボスにしか見えない。もはやパルパティーン。
あんな最悪なタイミングでの出産祝いは見たことないし、「撤回することは恥ずかしいことじゃない」「民主主義は形だけでいい」などの身震いするほどの発言を平然としてくる、「こいつには勝てない」感がビンビンの多田がいてこそ、この作品がワンランク上の作品になったと痛感してます。とりあえずこんな上司やだよ。(褒めてます)






自分はかなり政治に疎く、理解出来ないと思ってたんですが、話してる内容に難しい要素が一つもなく正直見やすいくらいの印象を感じました。
だからむしろ選挙権を持たず、SNSを使いこなしてる若い世代の子たちに見て欲しいというか、年一回くらい授業で見せた方がいいよこれは。

この作品を皮切りに、日本でもこのくらい攻めたポリティカル映画が普及していくといいなと思います。この映画が話題になってる時点ではまだ日本も終わっちゃいないってこと。
こんな作品が禁止され始めたらなんて考えるとゾッとするし、とにかくまだ見てない日本国民はいち早く見なきゃいけない傑作だと思います!!
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