この国の民主主義は形だけでいいんだ
ちょうど一年前に『バイス』を観た時に「日本でもこんな映画が作れたなら〜」と呑気に思っていたが、それほど間をおかずに『新聞記者』なる映画が誕生した。
東京新聞の望月記者の原作本に着想を得た本作は、加計学園や山口敬之といったほぼ現実の事件をトレースしながら、それを追う新聞記者と内閣情報調査室との緊迫感あるやりとりを描く。
奇しくも我々は今のコロナ禍で、今の政権が如何に危機管理能力を欠いているのか、まざまざと見せつけられているが、そうした政権を「サポート」する人々の様子も赤裸々に描かれる。
抑えた演技で苦悩する松坂桃李と、ジャーナリスト魂を燃やすシム・ウンギョンは、これが彼らの演技のベストアクトかと問われると微妙なところだが、フィクションとノンフィクションが混在する映画の中ではとてもバランスの取れた演技だと思う。
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正直に言えば『クライマーズ・ハイ』の様な異様なリアリズムもダイナミックも薄く、スピルバーグの『ペンタゴンペーパーズ』をなぞっているような印象もある。
がしかし、全ての国民を巻き込む現在進行形の出来事をフィクションの中に落とし込んでいる点だけでもこの作品には価値がある。