ナツミオ

新聞記者のナツミオのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
3.7
WOWOW録画鑑賞
W座

忖度、自粛、保身。
に一石を投じ、今までに数少ないジャンルに切り込んだ邦画と評価したい作品

日本アカデミー賞6部門受賞
最優秀賞=作品賞、主演男優賞、主演女優賞受賞

2019年日本作品
監督 藤井道人
原作 望月衣塑子『新聞記者』(東京新聞記者)
出演 シム・ウンギョン 松坂桃李
本田翼 岡山天音 田中哲司

東都新聞社会部記者・吉岡エリカ(ウンギョン)は、過去にジャーナリストの父が誤報により自殺した過去を持つ。
総理官邸記者会見で真実を知る為切り込む姿勢は同業記者や社内からも煙たい存在だった。

ある日、新聞社にFAXで、大学新設計画書が届き吉岡が調査を担当することになる。
調査を進める中、内閣府の神崎(高橋和也)という人物が浮かび上がるも、神崎は自殺してしまう。
その死に疑問を持つ吉岡に、ある巡り合わせで内閣官房の情報機関「内閣情報調査室」に属する若手エリート官僚・杉原(松坂)と知り合う。政権に不都合な情報操作を行う部署でありながら、彼は神崎の元部下であり自殺前に関わりがあったことから、死の真相究明の為に吉岡に協力することになる。調査を進める内にある事実が浮かび上がってくる・・・

新聞記者と政権側に属する官僚が真実を明らかにしていく過程も丁寧に描かれ、サスペンス作品として観られる。
内閣情報管理室の杉原の上司多田(田中哲司)の冷徹な役柄も良い。
職場もPCが並ぶ薄暗い部屋、部屋から外に出ると白い壁と廊下の殺風景な描写が秘密めいた感の演出も面白い。

圧巻は、シム・ウンギョンの演技。拙い日本語セリフは、韓国人の母親、アメリカ育ちの設定、外人記者との英会話も違和感ない。
途中、父親の自殺がトラウマとなって夢に見て泣くシーン、見慣れた日本女優でない新鮮な凛とした雰囲気と眼差しが魅力的な女優さん。
この様なポリティカル・サスペンス作品で、反政権的なイメージを嫌い日本の女優がオファーを辞退する中、ウンギョンが出演したことは興味深い。
また相手役の松坂桃李も抑えた演技で一皮剥けた役柄に挑戦したこと、日本アカデミー賞の主要部門受賞も納得。

中盤、羊の絵の謎が解ける描写や、「ダグウェイ羊事件」を絡めたところは、寒気がした。
終盤の展開は、少し物足りなくスッキリ感も無いが、最後に横断歩道で吉岡は何を語りたかったのか?

海外の作品では昔から政権を題材にした作品は多く近年でも「バイス」、「記者たち〜衝撃と畏怖の真実」、「ペンタゴン・ペーバーズ/最高機密文書」など秀作揃い。

ここまで期待すると、多少のガッカリ感は否めないが、国内作品でこの様なテーマに切り込んだ心意気は評価したい作品。
ナツミオ

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