kotta414

新聞記者のkotta414のネタバレレビュー・内容・結末

新聞記者(2019年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

政府の大学新設に関する不正、データ改竄、官僚の自死と、誰がどう見ても、安倍政権のもりかけ問題であることは明白で、現政権批判を日本映画が題材にするのは珍しいというので話題になっており、公開当時から気になっていた。
また、同世代の新進気鋭の監督の作品というのも注目していた。

インターネットやSNSの広まりで、新聞がかつてのような力を持ち合わせないとはいえ、やはりその発信される情報の信用度は一目置かれる存在であるのは変わりない。
その新聞記者として、真実にぶち当たった時、権力や脅しに屈することなく貫き通すことができるのか。
また、本来は国民のために働くことが使命である公務員が自身の保身を捨て、その矜持を保つことができるのか。

何も新聞記者や、公務員に限ったことではない。
働くということに対してどこまで真摯に信念を貫くことができるのかを問われている気がした。

数年前亡くなった私の祖父は地方有力紙の政治記者だった。
後半はかなり認知症も進み、自分の子供の顔さえ判別つかなく朦朧としていたが、亡くなる直前まで国会中継を見ることはやめなかったし、その時に話す政治的発言だけは、実に明瞭で少しも老いを感じなかった。
自分のやってきた仕事に誇りをもっていたのだろう。老いてもそのプライドだけは最期まで変わらなかった。
新聞記者とは、時は変わっても本質は変わらないのかもしれない。

藤木監督の作品は初見だったが、全体的にブルーがかったロートーンの映像が美しく、どこか気怠く無機質で、陰鬱とした内容と相まってうまく調和がとれていた。

そして、最後のあのシーン。
杉原はなんて言おうとしたのか?
私には、”ごめん…“にみえた。
例えその決断に至ったとしても誰が非難できるだろうか。

最後まで、まるで後ろにナイフを突きつけられ、お前はそこまで命がけで仕事を遂げられるか?と脅されている気分になり苦しかった。

松坂桃李くんは、良作に恵まれており、今までも彼の出演作は幾度となくみているが、何故か演技が入ってこないのは何故なんだろう?
完全に個人的に好みじゃないだけなんだろうけど。
だけど、最後の表情だけは良かった。

吉岡役のシム・ウンギョンは良かった。韓国とのハーフという設定が何か本編に影響するのかと思っていたが、あまりそこは重きにおいていない気がした。単純に演じた役者が韓国人だったというだけなのかなと。
(やれ反日映画が云々と、ネトウヨが色々言ってたけど)

あとは、本田翼ちゃん…
バラエティやCMは可愛くて大好きなのだけど、やはり演技はしないほうがいいと思う。
今回はそんなに重要な役どころではなかったとはいえ、もう少しまともな俳優さんだったなら、もっと台詞に含みを持たせられたと思う。

本田翼ちゃんの演技もあるけど、杉原の家族の描き方はちょっと違和感。
杉原の家族愛があまりダイレクトに伝わってこなく、杉原の葛藤が薄まって感じた。

エンドロールで流れる主題歌の歌詞も最後にずしんと来て、最後まで一貫していた。

世界で一番いらない映画賞だと思っている日本アカデミー賞だが、まともな本作品が、総なめだったのは珍しいなと思った。

藤木監督の作品はこれからも観たいと思える映画だった。
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