MasaichiYaguchi

轢き逃げ -最高の最悪な日-のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.4
「好事魔多し」と言うけれど、運気が巡って登り坂になったと感じた時こそ気を引き締めるべきなのかもしれない。
俳優・水谷豊さんの長編映画監督第2作は、監督自身による完全オリジナルの脚本で、正に「好事魔多し」で起こった轢き逃げ事件によって人生を狂わされた人々、加害者、被害者遺族、そして事件を追う刑事達の群像劇を描く。
一見単純な轢き逃げのように思われた事件は、悲しみに暮れる被害者の親が見付けた一つの遺品から思わぬ様相を呈していく。
事件の意外な顛末が明かされるに連れて炙り出されるのは人の業や罪。
特に本作ではキリスト教の七つの大罪の一つである「嫉妬」がクローズアップされている。
憧れと背中合わせの嫉妬が浮き彫りにする心の闇が作品に深い影を落とす。
ただ、本作は深い闇の先にある“許し”とも“光”とも言えるものを我々に示す。
水谷豊さんのライフワークである「相棒」シリーズを彷彿させるようなシークエンスもあったりして、共感を覚えるファンも多いような気がする。