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グッド・ボーイズのdm10foreverのレビュー・感想・評価

グッド・ボーイズ(2019年製作の映画)
3.9
【変わるもの、変わらないもの】

まだ自分が中学生だった頃、学校の近くに比較的大きな川があって、当然いくつかの橋が架かっていた。
で、誰が見つけてくるんか分からんけど、定期的に「おい!橋の下にエロ本落ちてるぞ!」という知らせが舞い込む。
何故なのかは分からないけど、何故かいつも決って橋の下には雨風に曝されてベロベロにふやけたエロ本が落ちていた。
その「捨てられているエロ本」にはとてつもない「エロス」と「背徳感」があって、それを仲間内でヤイヤイ言いながら
「やべ、なまらエロくない?」
「ちょい、そこの枝でページめくれって」
「(一同)おぉ・・・・・・」

何ですかね(笑)
あんな汚いエロ雑誌にとてつもない興味を持っていたあの頃。
でも、決して親に言うようなことではなく、その場にいた奴らの暗黙の了解で心の奥にしまっておく。
・・・はずが、次の日一人でこっそりそこに舞い戻る奴がいる。しかしそのエロ本だけがきれいになくなっている。そんな「中学生あるある」。

小学生から中学生にかけて、ほんと、成長速度は人それぞれなんだけど、妙に「性」というものに目覚めた自分に困惑する。
(自分だけなんだろうか?)
(他の奴らもエロ本とか見るのかな?)とか、聞くに聞けない。
なんとなく「恥かしい」から。

だから「橋の下」での秘密の契りは、お互いの妙な団結感を深めることになる。
(俺たちの「エロ」の現在位置はこの辺だよな)っていう感じで。
あの頃は「携帯」はおろか「インターネット」だってない時代。
テレビやビデオ(DVDじゃないよ、ビデオだよビデオ、それもβじゃなくVHSのほうね)だって、一家に一台が当たり前の時代だから、自分の部屋で「知識」を得るにも限界があった。
だから学校の友達や、ちょっと悪い先輩の武勇伝に目を輝かせて聞き入っていた。

そんな「不便さ」こそが、女性との距離感であり神秘性でもあった。

今みたいに見たいときに見れるっていうのは便利だけど、「マナーやエチケット」や「異性への思いやり」という過程をどこかすっ飛ばして「結論」だけを垂れ流しているようで、ちょっと寂しさを感じる。

きっと今の子達は「毎度お騒がせします」で中山美穂のパンチラをみて興奮していたあの頃の健全な少年たちの気持ちなんて、もう分からないんだろうな・・・。


余談が長すぎ(笑)

っていうのもね。
この映画。好きなんです。めっちゃ笑えるんです。
肩を脱臼した奴に「衝撃を与えて骨の位置を戻すから、衝撃に備えて何か硬いものを咥えておけ」って言いながらボールギャグ咥えさせたり、キスの練習するといって「人工蘇生練習用の人形」といいつつダッチワイフで練習してみたら「なんだかネバネバする。なんで口に毛が入ってるんだよ!?」とか。

「無邪気な子供」というフィルターを通して大人を笑かせに来ているのはよくわかったんだけど、あんまり直接的に「ポコ○ン」だの「ア○ル」だのを連呼させたり、バイブやらセックスドラッグやらがひっきりなしに映し出されると、途中から「僕は今何を観てるんだろう?」と立ち止まってしまう瞬間もあった。
近くに座っていた50過ぎくらいのおじさんが声出してゲラゲラ笑っていたけど、そういう事。
大人目線で観て笑えるんだけど、それを子供に演じさせている内容が結構過激というか、見た目と内容のバランスが・・・。

観る前に想像していたのは「子供たちがちょっとずつ成長していく」という過程で「未知の扉」を開いていくときの「ドキドキ感」や「高揚感」そして「背徳感」。
でも、国も違えば時代も違う。性教育の強度や速度もきっと日本とアメリカでは違うんだろうな・・・なんてことをぼんやり考えてしまった。

でも、「ジュブナイルもの」の王道プロットがちゃんと底に流れているから、ただ単に下ネタ祭で終わらない辺りは流石。
3人の主人公が恋愛や家庭、自分自身へのコンプレックスなど、本当に少年期から青年期に誰もがぶつかる悩みの中で必死に答えを見つけようとする。
だけど、どんなにもがいても思っていたような答えは見つからなくて、気がつくと「時間」が自分たちを適当なポジションに納めてくれている。
(どんなときも一緒だ!)と堅く誓った友情も、いつしか形を変えていくかもしれない。
だけど、それは悲しいことじゃなく、大人になっているってことでもあるんだ。

(もう僕たちは5年生じゃない!6年生だ)

大人からすれば大差がなくても、彼らにとってはとてつもなく大きな一歩。
それは「また一歩大人に近づいたんだ!」と自分自身を奮い立たせる魔法の言葉なのかもしれない。

見方によってはちょっと「痛々しく」も見えるギリギリの加減。
だけど、嫌いじゃない。
それはギャグのセンスというよりは、お馬鹿なりに方向性を見失わずに最後まで走りきったから。

ジェイコブ・トレンブレイ君は大きくなったね~。
Wonderの頃から見たらすごく大人っぽくなった。
で、ヒロインのブリクスリーを演じたミリー・デイヴィスもどっかで観たな~って思ったら、これまたWonderでいい子だった「サマー」を演じたあの子だったのね!こりゃまた素敵なご縁で(笑)

子供が主人公だからってほっこりするような内容ではありませんが、笑える映画なのは間違いないです。
絶賛ではないけど、こういうのも嫌いじゃない。
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