mimitakoyaki

行き止まりの世界に生まれてのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

4.4
監督が地元のスケボー仲間を12年間撮り続け、それぞれの抱える問題や葛藤とその背景にある心の傷に迫り、そこから見えてくる小さな光を映したドキュメンタリー作品。

監督自身も、スケボー仲間のザックとキアーも、共通して父親からの暴力を受けて育っていました。
3人それぞれが自分の心の傷を見つめ、生きづらさにもがきながらも、自分自身や過去をゆっくり受け入れていったり赦したりしていく過程はまるでセラピーのよう。

ラストベルトと呼ばれる廃れた街で、街も人も閉塞感で行き詰まり、貧困や暴力や差別に自尊心を削られ、自分を大切にできずに、刹那的で自堕落な生き方しかできなかったり、自分も虐待されてたのに、彼女に暴力を振るったりするのがとても痛々しくて、そんな生き方ではダメだともがいて、生き直そうとする姿に救われました。

父親から暴力を受け、子どもの頃は怒りの衝動をぶちまけてたキアーが、「父さんがこう言ってた」と何度も父親の言葉を思い出しながら、父親なりの愛を感じるようになり、自分を少しずつ肯定できるようになり、優しい笑顔を見せるようになって、大人になっていく様がとても美しく尊いと思ったし、彼が流す涙に何度も胸が締め付けられました。

監督自身も継父からの暴力から守ってくれなかった母親とカメラ越しに向き合い、母親なりの思いや心の傷を感じとり、この撮影を通して、自分の気持ちを整理していくのも心を打たれました。

監督自身がザックやキアーの痛みを自分ごとのように理解できるからこそ、そして、子どもの頃から大好きで、逃げ場であり居場所であり生きる理由だったスケボーを一緒にやってきた仲間としての信頼があったからこそ、あそこまでとてもとても繊細な心の奥底に触れる事ができたんだろうと思います。

監督がスケボーしながら撮ってるであろう映像も滑らかでスピード感や躍動感があり、とても新鮮でした。
人の心の内に迫る素晴らしいドキュメンタリーでした。

50
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