なるほど、スケーターがローラースケートに乗せる想いがこの映画と原題『Minding the Gap』でわかった。
彼らはスケートしている間は、障害物を乗り越えることに集中できるために、今起きている不安や悩みを逃避できる。そして、スケートだけはコントロールできる対象であって、もしかすると唯一なのかもしれない。
ローラースケートが現実逃避と相性がいい理由がようやく納得できた。
また、悲惨な過去を”Gap”と捉えることもできるだろう。
自分や周りの人に思いやりをもって接することができるようになるために、過去ときっちり向き合うべきなんだという気概を感じた。
さらには、”Gap”を「将来性が見えないこと」とすることもできるだろう。
家族や恋人からの暴力を耐えてでも、側にいてくれる人を欲する。ラストベルトらしいと形容するのも失礼かもしれないが、活気がなく錆びていく、未来がどうしても明るく見えない環境下のとてつもない不安を埋める手段を彼らは探している。
他にもさまざまな”Gap”がこのドキュメンタリーにはあって、そこに誰もが抱えるものを内包している。
93分と短いにもかかわらず、これを題材に何時間でも話ができるくらいに奥が深い。人を選ばない名作であった。