品川巻

行き止まりの世界に生まれての品川巻のレビュー・感想・評価

4.4
『mid90s』ではスケボーの文化が少年たちの見栄やグループ内カーストで誇示する"力の証明"として描かれていたけど、こっちは「若者たちの拠り所」としての見せ方が主体になっていた。
どちらも監督の"私小説"的な要素はあり、スケボーを通過儀礼というか成長の手段として映し出していたし、貧困や差別からの"シェルター"としての役割を担っていたという共通点もあった。

相違点で言えば、対話シーン(ビンのお母さんへのインタビュー、キアーと友人たちの白人への差別談義)などヒリヒリ感はこっちの方が強くて、気まずいから若干笑顔を作りながらも芯は通すとか、若者のナマのコミュニケーションも色濃く映し出されていた。

「(父親の墓が)どこだか思い出せたらすごくいい1日になるのに」
暴力を振るうような父親でも、きっと愛情がゆえの躾・お仕置きだったのだと落とし込むキアー。そんな父親を嫌いにはなれないという曖昧な気持ちが、お墓を探しに行くシーンで「死ぬほど愛してる」確信に変わった、あの瞬間のキアーの表情が忘れられない。
彼がシャツで涙を拭うような生活が再び訪れませんように。。。
品川巻

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