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行き止まりの世界に生まれてのtamomのレビュー・感想・評価

4.7
ドキュメンタリーでここまで心を動かされてのは初めて。

冒頭、誰もいない街を3人がスケボで駆け抜けるシーンは、音楽、カメラワーク共に最高!
キアーが1人で走るラストのシーンにつながったとき、得もいえぬ感動があった。



この世界を生き抜くには『想像力』が必要で、相手の境遇や経験を想像して理解する力が必要不可欠。

監督であり、いち登場人物でもあるビンリューがそれを体現している。彼のインタビューや独白を通して、歪んだ世界の被害者ともいうべき人物達の両極端の姿が浮かび上がる。

さらに『自己内省する力』も同様に必要だと強く訴えかけられる。格差が広がった社会、特に経済発展から見放された地方においては、ちょっと気を抜いただけで簡単に落ちこぼれてしまう。

『ネガティブな経験をしたとき、それをプラスのエネルギーに変えられる奴がいる。けどおれはそういうタイプじゃない』
『自分の人生が苦しいのは自分自身が最低な奴だから』
『わかっているけど、おれはもうとことんまで落ちてやるって決めたんだ』

と、自嘲的に語るジャックの姿は、痛々しくも、どこか他人事には思えない。


ビンリュー自身が周りの友人達を撮り続けた本作。誰もが自分を表現し、発表できる時代になったことを痛感する。
苦しむ人達が声を上げる方法として非常に有用であり、今後のドキュメンタリーの流れが変わるのではないだろうか。

ドキュメンタリー苦手と言う人にも
今1番全力でおすすめできる傑作!
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