教授

行き止まりの世界に生まれての教授のレビュー・感想・評価

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ドキュメンタリーが「映画」になるのは、映し出された「事実」が「物語」として機能した瞬間であり、それを「映した」時にそれが「映画」になる気がする。

ありのままの現実にカメラが入り込んだ時点でそれは「非日常」であり、実際は「リアル」は存在しない。
そこにはカメラを前にした忖度の働いた「見せたい自分」を被写体は必ず演技をし、演出する。

しかし劇映画がそれであるように、演出やシナリオ、俳優の演技という虚構から作り手のドキュメントが浮かび上がるように、本作でも被写体たちが語ろうする言葉の端々から、本人も自覚していなかった表情や、言葉、仕草から「ドキュメント」が浮かび上がってくる。

「スケートボード」に熱中する若者たちの成長という「プロット」から、そこに生きている現実の若者たち(監督自身も含む)という「小さな個」から「アメリカ」であったり「DV」「貧困」「失業」「人種」など様々な問題が映し出される。

本作はそれら「現代が抱える闇」のさらに根幹まで主人公たちの「親の世代」に向ける。
そこで監督のビン・リューの視点は怒りや憎悪ではなく、手探りで、自らの身の丈の範囲で理解を深めながら追求を進めていく。

冷静さを持って「何が原因だったのか」を語るのではなく、時には自らも被写体となり「見せていく」ことに徹するところに映画的な豊かさを感じる。
「ヒーロー」から一般市民になっていくザックや、コツコツと持ち前の努力で「ヒーロー」になっていくキアー。理解から受容を獲得していくビン・リュー監督自身の「物語」がまさに青春映画していく構成が見事に「劇映画」になり変わっていて面白かった。
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