木村優希

行き止まりの世界に生まれての木村優希のレビュー・感想・評価

4.5
「心の痛みを癒してくれる道具」


テレビでオススメされているのを見てなんとなく記憶に残ってた。たまたま何を観ようか探していてタイトルを思い出したので観ましたが、観れて良かった。

スケートボードを通して、3人の少年の少年期から成人後を追ったドキュメンタリー。
ただ、スケートボードをしていればそれだけで良かった少年達が、大人になって社会に出たり、家族を持つことで変わる環境とどう向き合っていくのか。
暴力や差別の中で生きてきて、これからもその中で生きていく為の約10年。

これは、スケートボードにはじまりスケートボードが繋ぐ話なんですが、構成が素晴らしい。
それぞれが抱えるものや願いや未来みたいなものの背景には、スケートボードをやっている無邪気な子ども時代があって、でもそれぞれに生まれた家庭の歴史があって、悩みながら生きてる。

監督が幼なじみの1人というのも、内面を自然と引き出せるのに適していたんだろうけど、何よりもそのカメラワークが素晴らしく、スケートボードで街中を走り抜ける対象を追いかけたり並走したり、それだけで楽しそうな姿に寄り添えるしその画が信頼感を持っていてグッとくるものがあった。

皆未来に何かしらの不安を持ちながらも「心の痛みを癒してくれる道具=スケートボード」があるから少しでも前を向いていられるんだなと思いました。
私の「心の痛みを癒してくれる道具」は何だろうとしばらく考えてしまった。
木村優希

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