しちれゆ

行き止まりの世界に生まれてのしちれゆのレビュー・感想・評価

3.7
″クソ自由の国″アメリカの行き止まりの世界。
未熟な人間が何かに依存せずにはいられず、他人とくっつき子供を作り愚かな親になり暴力を振るう、という自由。ここに出てくる女性たちも皆1人では生きられず、キアーの母は新しい男を作って寝室に籠り、ビンの母も息子より男、ザックの妻ニナも幸せを夢見て赤ん坊を産んだ。新婚の頃の2人の仲睦まじい様子やザックが楽しげにおむつ替えをしているところは案の定長くは続かない。彼らの赤ん坊エリオットの将来も想像出来てしまう。

疾走する自分を求めて小さな板に乗る若者たちはいつかは板から降りて自分の足で歩き始めなければならない。スケボーに乗って見ていた流れ去る世界は現実ではなく、のろのろと歩く自分こそが本当なのだ、と知っていく。
救いの見えるラストではあったけれど、それは天井の見えている救いでしかない。それでも彼らはこの作品によって自らを見つめ、気付き、新しく生き始めただろう。幸せなことに彼らはまだ若い。ビンが撮りためた映像に残るあどけない笑顔の自分自身をどうか裏切らないで、と思う。
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